◆脱会救出を巡る裁判の判決例 (東京高裁 平成14年12月26日判決) 東京裁判:地裁→高裁→最高裁 |
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平成14年(ネ)第1987号 人格権に基づく差止等請求控訴事件 (原審・東京地方裁判所平成11年(ワ)第7723号) (口頭弁論終結の日 平成14年10月22日) 判 決
主 文 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第2 事案の概要 事案の概要、基礎となる事実、争点及び当事者双方の主張は、原判決の「事実及び理 由」第2に記載のとおりであるから、これを引用する。 第3 判 断 1 当裁判所も、控訴人らの請求はいずれも理由がないので棄却すべきものと判断するが、その理由は、次のとおり付加するほか、原判決の理由説示(「事実及び理由」第3)と同一であるから、これを引用する。 (1) 原判決20頁末行末尾に次のとおり加える。 「控訴人M子は、その際被控訴人両親によって両足を電気コードで縛られた旨供述(陳述書の記載を含む。)するが、被控訴人両親の反対趣旨の各供述に照らし採用することができない。」 (2) 原判決23頁17行目末尾に次のとおり加える。 「なお、被控訴人I・Kが事前に作成した書 面(甲39)には、「実行日 平成10年5月16日土」「時間 朝7時」「場所 昭島市マンション(本人の居住)」「人員 男8人女5人」 「車 八人乗りワゴン 普通自動車2台」「配置 玄関より両親部屋に入る(本人に趣旨説明し連れ出す)(部屋の裏側2名待機 表側3名待機) ワゴン車運転者は車の中で待機 本人が騒いだ場合近所の対応は男1名女3名で対応する」などの記載があるから、被控訴人両親らは、あらかじめ打合せの上、上記のような連れ出し行為を行ったものと推認される。」 (3) 原判決25頁24行目末尾に次のとおり加える。 「控訴人らは、被控訴人Sは拉致監禁を手段とした統一協会信者の脱会強要活動を常習的に行ってきたのであり、監禁場所の設定や拘束手段について積極的に関与し、本件においても被控訴人両親を指揮命令する関係にあった旨主張するが、証拠(甲64、乙23、原審における被控訴人S)によれば、被控訴人Sは、統一協会信者の両親等から相談を受けて助言に当たり、信者本人に対して統一協会から脱会する説得活動をしていたことが認められるものの、控訴人らが主張するように、拉致監禁を手段とした脱会強要活動を常習的に行ってきたことや被控訴人両親を指揮命令する関係にあったことを認めるに足りる証拠はない。」 (4) 原判決26頁13行目末尾に次のとおり加える。 「控訴人らは、被控訴人Sには統一協会の信者に対する脱会の説得活動に際し、信者が精神的、身体的に拘束された状況で意に反する脱会を強いられていないかどうかについて注意を払うべき高度の注意義務があった旨主張するが、被控訴人Sにそのような注意義務があったというべき理由はない。」 (5) 原判決27頁17行目末尾に次のとおり加える。 「控訴人らは、日本基督教団が統一協会信者に対する拉致監禁、脱会強要を組織的に行っている事実は、同教団の牧師が平成4年9月10日に名古屋地方裁判所においてした証言(甲93)によって明らかであると主張するが、同裁判所平成7年(ワ)第1847号損害賠償請求事件の判決(乙75)においては、牧師が統一協会の信者を脱会させるた めに信者を拉致監禁した事実(関与の事実)は認められない旨判示されているところである。なお、証拠(甲93)によれば、日本基督教団「統一原理問題連絡会」は、統一協会信者に対して救出活動と称する脱会の説得活動を行う連絡会であること、同教団は、北海道から沖縄まで全国16教区に対策委員会と相談窓口を設け、各教団窓口が年数回連絡会を開いて情報交換をしていることが認められるが、その活動は、統一協会信者の家族に対する支援活動の範囲を超えるものではなく、同教団が統一協会信者に対する拉致監禁、脱会強要を組織的に行っているものと認めることはできない。」 (6) 原判決27頁21行目末尾に次のとおり加える。 「なお、本件で問題となっているのは、控訴人ら主張の「第2回目の拉致監禁」について被控訴人Sの不法行為が成立するかどうかであるから、上記行為につき被控訴人両親の不法行為が成立するかどうかについて判断する必要はない。」 (7) 原判決28頁13行目の「記述」の次に次のとおり加える。 「(「私は牧師として、あなたがついてきた嘘がどのようなものであるか、それを知らせなければならないと感じていました。嘘は人を傷つけ、人の一生を台無しにしてしまうのです」「嘘をついているということがどんなに重大な犯罪であるかということを、私はあなたに知らせなければならないと思ったのです」など)」 (8) 原判決29頁18行目の「相当である」の次に次のとおり加える。 「(控訴人らは、被控訴人Sは控訴人M子が被控訴人両親の問いかけに対して抗議したことに激怒し、「何だその態度は」と言って控訴人M子の顔を蹴ろうとし、「ふざける な」と言いながら控訴人M子の顔を座布団で3回殴打し、また、両肩を3回両手で強く押したと主張し、控訴人M子は原審において同旨の供述をするが(陳述書及び日記の記載を含む。)、これを否定する被控訴人らの原審各供述及び証人S子の原審証言(いずれも陳述書の記載を含む。)に照らし採用することはできず、他にこれを認めるに足りる的確な証拠はない。)」 (9) 原判決30頁15行目末尾に次のとおり加える。 「控訴人らは、控訴人M子は「第2回目の拉致監禁」後に豊島区北大塚の病院で診察を受け、左第一腰椎横突起骨折、右大腿部・右臀部打撲、左母指側副靭帯損傷で全治3週間の治療を要すると診断され、また、港区南麻布の医院で診察を受け、強制的監禁による不安感、不眠、自律神経失調状態が認められ、外傷後ストレス障害により療養・通院治療が必要であると診断された旨主張し、証拠(甲5の1、2)によれば、控訴人M子が上記のような診断を受けたことが認められるが、「第2回目の拉致監禁」について控訴人Sに不法行為が成立しないことは前記説示のとおりである。」 (10) 原判決34頁6行目末尾に次のとおり加える。 「甲第96号証(「カルト被害リハビリセンター設立にご協力を!」と題する書面)によれば、被控訴人Sはカルト被害リハビリセンター設立準備委員会の「代表」に名を連ねていることが認められるが、これをもって被控訴人Sが控訴人M子に対する拉致監禁、脱会強要を企図しているものということはできない。」 2 よって、原判決は相当であり、本件各控訴はいずれも理由がないので棄却することとし、主文のとおり判決する。 |
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