声  明
2025年03月25日

東京地裁による旧統一教会に対する解散命令を受けて


 全国霊感商法対策弁護士連絡会

    
 代表世話人 弁護士 郷路征記(札幌)
代表世話人 弁護士 中村周而(新潟)
代表世話人 弁護士 河田英正(岡山)
代表世話人 弁護士 平岩敬一(横浜)
代表世話人 弁護士 山口 広(東京)
事務局長 弁護士 木村 壮(東京)  
  
1.本日、東京地方裁判所は、世界平和統一家庭連合(旧世界基督教統一神霊協会。以下、「統一教会」といいます。)が約40年の長期間にわたって行ってきたいわゆる霊感商法や高額献金によって多数の市民に「類例のない膨大な規模の被害」を生じさせてきたこと、また、その「献金勧誘等行為の態様は、総じて悪質であり、また、その結果についても、本人や近親者等の生活の維持に重大な支障が生じ、長期間にわたって深刻な影響を受けたものが相当数」いること等を理由に、宗教法人法81条1項1号の「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をした」と認定し、統一教会に対する解散命令を下しました。

2.統一教会が行ってきた霊感商法や違法な献金勧誘行為は、組織的に、約40年の長期間にわたって継続されてきた極めて悪質な活動です。当会や全国の消費生活センター、全国統一教会被害対策弁護団に相談のあった被害相談は、当会の集計で、1987年から2023年までで合計3万5287件、総額1339億9686万6553円に及びます。東京地方裁判所の本日の解散命令は、このような統一教会の違法な組織的活動実態を正しく認定して下されたもので、高く評価できるものです。
 この決定は、1990年代初頭から統一教会の解散命令を求めてきた当会及びこれまで甚大な被害を受けてきた被害者及びその家族の方々が長く待ち望んだものです。一方で、当会としては、当局による解散命令請求は遅きに失したものであり、統一教会による霊感商法や違法な献金勧誘行為が社会問題化してから速やかに解散命令請求がなされなかったことが、多数の被害者を産むことの一因になったことは否定できないと考えます。
当会は、政府に対し、これら被害者の救済が迅速かつ確実になされるための方策を採っていただくくよう強く求めます。
 統一教会は、本日の東京地方裁判所の解散命令を真摯に受け止め、これに対して抗告する等して徒に争うことなく、全ての被害者への謝罪及び適切な賠償を行うべきです。仮に統一教会が抗告した場合には、東京高等裁判所は速やかに審理を進めて抗告を棄却し、解散命令を確定させるよう求めます。


3.統一教会への解散命令が確定すると、宗教法人としての統一教会の清算手続が始まります。この清算手続は、現在統一教会に対し損害賠償を求めている被害者等にとって被害救済を受ける重要な手続であるだけでなく、まだ声をあげていない被害者にとっては救済を受ける最後の機会になります。被害を受けた方、被害と言えるかは分からないが統一教会にした献金等に疑問を抱いている方、家族の献金によって苦しい生活を強いられた方、信仰を強要されるなどの人権侵害に苦しんできた2世、3世の方々などは、この機会に全国の法テラスの相談窓口に是非ご相談ください。
4.現在の宗教法人法には、統一教会のように、継続的、組織的に不法行為を行い、多数の被害者が発生した場合の清算手続を想定した具体的な手続を定めた条項を設けていないという問題点があります。前述のとおり、清算手続は長年苦しんできた多数の被害者を救済するための重要な手続ですので、迅速かつ確実な救済が得られるよう、国会、文部科学大臣において、速やかに適切な法令等を整備することを求めます。

5.解散命令が確定し、宗教法人としての統一教会が清算されるとしても、統一教会及びその信者らは任意団体等として活動を継続することができます。しかも、日本の統一教会は、教祖文鮮明、その亡き後は韓鶴子を絶対的な存在として、両者やそれに近い幹部らの指示を絶対視するよう教え込んでいます。そして、韓国の幹部信者らは日本の市民がどんなに苦しめられてきたのかについて全く配慮せず、いつまでにいくら資金を拠出しろ、あるいは韓国などのイベントに日本から何百名出席させろなどと指示し続けて来ました。統一教会の韓国本部が日本国内の深刻な被害実態を考慮することなく、多額の資金や人材提供を指示する体質は現在に至るまで何ら変わっていません。そこで、今後、霊感商法や違法な献金勧誘が繰り返されないよう、消費者庁においては、継続して被害申告の窓口を設け、統一教会が今後同様の活動を繰り返す場合には迅速に適切な措置を講じるよう求めます。

6.最後に、東京地方裁判所において解散命令が発出されたことを契機として、これまでもSNS等で声をあげた被害者や2世、3世に対してなされてきた誹謗中傷等がさらにエスカレートするおそれがあります。このような個人攻撃のため日常生活に深刻な支障が生じ続けている2世、3世もいるのです。そのような違法行為を決して行わないよう、また、被害相談を受けた警察等の当局は誹謗中傷に対して速やかに適切な対処をするよう求めます。
 解散命令が確定した後の清算手続には上記問題点が存在し、被害救済までの道程にはまだまだ解決しなければならない課題があります。また、統一教会による被害は経済的被害に留まるものではありませんが、経済的被害以外の被害の救済や二世問題、家族の問題をどう解決していくかという問題も残されています。
 当会は、これら統一教会に関する問題の解決のため、被害者の声に耳を傾け続け、関係各機関とも協力して努力を続ける所存です。
以上