声  明
2024年02月22日

旧統一教会に対する解散命令請求の審理について


  
全国霊感商法対策弁護士連絡会

 
 代表世話人 弁護士 平岩敬一(横浜)
代表世話人 弁護士 郷路征記(札幌)
代表世話人 弁護士 中村周而(新潟)
代表世話人 弁護士 河田英正(岡山)
代表世話人 弁護士 山口 広(東京)
事務局長 弁護士 川井康雄(東京)
  
 
 本日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する解散命令請求事件の審問手続が行われる。これに関し、当連絡会は以下のとおり、意見を述べる。 

第1声明の趣旨 
   裁判所及び政府に対し、旧統一教会の解散命令請求事件の審理を可能な限り迅速に進め、速やかに解散命令が発令されるように求める。
 その前提として、政府に対し、解散命令請求事件の審理を確実かつ迅速に進められるように万全の体制を整えるよう求める。

   各政党並びに国会及び地方自治体の各議会に対して、第三者委員会等のしかるべき機関を立ち上げ、その所属する国会議員及び地方議会議員全員について、旧統一教会(関連団体を含む。)とのこれまでの関係について調査し、メディアへの公表を通じて調査結果を有権者に公表するよう求める。
 また、政治家の皆様(首長を含む。)に対して、旧統一教会との関係を断絶し、旧統一教会やその信者から選挙での支援を受けることがないよう求める。さらに、その所属する各議会においても関係を断絶する決議をするように求める。


第2 声明の理由
   迅速な審理による解散命令の早期発令の必要性(第1項関係)
    (1)昨年10月13日になされた旧統一教会に対する解散命令請求は、日本のカルト問題対策の歴史における重要な一歩であるが、同時に遅きに失した一歩でもある。
 旧統一教会の被害者は、長年に亘り旧統一教会により財産を搾取され続けた高齢者や、財産をほぼ全て収奪され日々の生活にすら窮している方等がほとんどであり、速やかな被害抑止及び被害者救済のために解散命令が早期に発令されるべき必要性は極めて大きい。
 また、解散命令確定後の清算手続において被害者救済を実現するためには旧統一教会の財産を保全しておくことが不可欠であるところ、このような財産散逸防止の観点からも早期の解散命令発令が必要である。


    (2)旧統一教会は、盛山正仁文部科学大臣が解散命令請求時の記者会見で明言した通り、「長期間にわたって継続的に」「自由な意思決定に制限を加え、正常な判断が妨げられる状態で献金や物品の購入をさせて多額の損害をこうむらせ」、また「家族を含めた経済状態を悪化させ、将来の生活に悪影響を及ぼし、その結果、献金しなければならないとの不安に陥ったり、家族関係が悪化したりするなど、本人や親族に与えた精神的な損害も相当甚大」「多くの人の財産的・精神的犠牲を余儀なくさせて、その生活の平穏を害」してきた団体であり、それを裏付ける多数の確定判決や被害者陳述も存在しており、解散命令の結論を導くためにそれほど時間を要するとは思えない。
 当連絡会は、裁判所及び政府に対し、解散命令請求事件の審理を可能な限り迅速に進め、速やかに解散命令が発令されるように改めて求める。


   盛山大臣に関する報道について(第1項関係)
    (1)解散命令請求の審問手続が近づいたタイミングで、盛山大臣がかつて旧統一教会の関連団体から選挙支援を受けていた疑いがあるとの報道がなされ、これを受けて、同大臣に対する国会における追及がなされている。
 これに関し岸田文雄首相は、「盛山大臣のもとで解散命令請求の手続きを行い、過料請求との2つの裁判手続を進めてもらっている。」とし、「解散と被害者救済に向けて責任を果たしてもらいたい。」として続投させる意向を示している。
 一方、各種の世論調査では盛山大臣は大臣を辞任すべきだとの声が大勢を占めている。

    (2)現在最も優先されるべきことは、盛山大臣の責任論ではなく、前記のとおり解散命令を早期に発令してもらい速やかな被害抑止及び被害者救済を図ることである。
 盛山大臣は今般の報道について、旧統一教会が「揺さぶりをかけてきているということも十分に考えられる。」と述べているところ、報道された時期や報道の内容からしてもそうした可能性は十分に考えられる。そうであるとすれば、そうした「揺さぶり」によって解散命令請求の審理に悪影響を及ぼすことなど断じて許されない。
 当連絡会としては、政府に対し、解散命令請求の審理を確実かつ迅速に進め解散命令が早期に発令されるよう、万全の体制を整えるよう求める。


   政治と旧統一教会との関係(第2項関係)
    (1)盛山大臣についての報道が旧統一教会による「揺さぶり」によってなされたものだとすれば、そのような間隙を与えたのは、そもそも旧統一教会と政治家との癒着の実態に関する調査が不徹底だったからである。
 2022年7月8日の安倍晋三元首相銃撃事件以降、旧統一教会と政治家の極めて深刻な癒着の実態が次々と明るみに出たことから、政界では、各政党において旧統一教会との従前の関係性を問うアンケートが実施されたり、個別の議員において旧統一教会との関係を絶つという表明がなされたり、岸田首相において自民党は旧統一教会との関係断絶を徹底する旨の国会答弁がなされたりするなど、旧統一教会との関係を見直す動きが一定程度見られた。
 しかし、選挙での協力を得るための組織的関係や政策形成への影響の検証、旧統一教会の名称変更への便宜供与の存否等についてのそれ以上の徹底した調査は行われず、世論の沈静化とともに癒着の実態はうやむやにされたままとなっている。


    (2)アメリカでは、1976年以降、フレイザー下院議員を座長とする委員会が「コリアゲート事件」(旧統一教会が関与した韓国政府等による米国政界工作事件)に関する調査を行い、「フレイザー報告書」と称される大部の調査報告書が公表された。それをもとに、旧統一教会の教祖文鮮明が脱税容疑で告発され服役することになり、以後、同国での旧統一教会の活動はそれ以前に比べて大幅に下火になった。
 このような他国での取り組みも参考に、旧統一教会と政治家とのこれまでの癒着の実態について、第三者委員会等の機関を設置した上で徹底した調査を行うとともに、今後、政治家の皆様には旧統一教会との関係をしっかりと断絶していただくことが是非とも必要である。
     当連絡会は、旧統一教会と政治家の癒着についてかねてより繰り返しその問題を指摘し、上記のような取り組みを求めてきたものであるが、解散命令請求事件の審問手続という節目を迎え、政治家と旧統一教会との関係が改めて問われているこのタイミングで、政治家の皆様に重ねて取り組みを求める次第である。

以上