声   明
2023年1月6日

「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律(不当寄附勧誘防止法)」の運用について

全国霊感商法対策弁護士連絡会          
代表世話人 弁護士 郷路征記(札幌)
代表世話人 弁護士 中村周而(新潟)
代表世話人 弁護士 河田英正(岡山)
代表世話人 弁護士 平岩敬一(横浜)
代表世話人 弁護士 山口 広(東京)
東京都港区西新橋3-15-12
西 新 橋JKビル 6階
田村町総合法律事務所

電 話03-3431-4488
FAX03-3431-4481
事務局長 弁護士 川井康雄  
     
 昨年12月10日、「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律」(以下「新法」という。)が成立し、同法は、一部の規定を除き本年1月5日から施行された。

この新法は、世界平和統一家庭連合(以下「家庭連合」という。)による献金収奪行為の実態からすれば、救済の範囲が不当に限定されており、不十分なものであって、今後の施行状況を慎重に検証しつつ、より実態に即した被害者救済と新たな被害抑止に役立つ法律への改正がされるべきである。

しかしながら、当連絡会は、政府および与野党が尽力して新法による被害救済と被害抑止を目指されたことに感謝し、新法の施行状況を検証するだけでなく、少しでも有効に運用されることで役に立つものになるよう、次の点を提言し、消費者庁に早急に運用を開始頂くよう求めるものである。消費者庁におかれては、令和4年12月8日「衆議院消費者問題に関する特別委員会」の新法に関する附帯決議及び同月10日「参議院消費者問題に関する特別委員会」の同附帯決議に則り、適切な措置を講じていただきたい。
 
 新法第3条 配慮義務規定について 

(1) 新法第3条は次の行為類型について法人等に配慮義務があるとした。 

  自由な意思を抑圧し、献金するか否かについて適切な判断が困難な状態に陥らないようにすること
  本人、配偶者、子どもらの生活の維持を困難にすることがないようにすること
  献金の相手の法人や使途を誤認させるおそれがないようにすること

  この配慮義務規定に違反する行為こそ重大な献金被害をもたらす典型的行為であるから、本来これらの行為を禁止行為として明記し、これに反してなされた献金は取消対象とされるべきであった。

  (2)  新法では配慮義務に留められたものの、これに違反した場合の行政措置が規定された。この行政措置に関する規定はまだ施行されていないため、速やかに施行することが必要であり、また、当該規定の実効性を高め、被害防止ないし被害救済に繋げるためには、これら配慮義務違反行為によって生じた献金被害を察知した市民が誰でも、新法の所轄庁である消費者庁の担当窓口にその配慮義務違反行為の具体的事実を通報できるシステムを整備するべきである。

 具体的には、上記通報を一般市民が誰でも容易にできるよう、口頭、電話、メール等の方法の如何を問わず通報を受理できる体制にすると共に、同通報を受けた場合、消費者庁は速やかに通報された法人等に対して報告を求めるなどして事実関係を調査し、必要であれば配慮・遵守すべき事項を示し、これに従うべきことを勧告することとして、その実行のための体制を整えるべきである。

 また、消費者庁は速やかに上記勧告を発する手続きや要件、さらには勧告を発してもこれに従わない法人と勧告に従わない事実を公表するにあたっての判断基準や手続を整備して公表すべきである。

新法第4条と第5条の禁止行為規定について

  (1) 新法第4条の禁止規定各号は、第6号以外ほとんど改正前の消費者契約法の規定と重なるものであり、第6号を含めて被害救済の実効性は乏しい。
また、第5条の第1、2号の規定はあまりに限定的な禁止行為類型と言わざるを得ない。


   (2) しかし、新法がこの内容で施行される以上、前記配慮義務と同様、被害防止ないし被害救済に繋げるため、各禁止規定違反行為があった場合には市民が誰でも消費者庁の担当窓口にその禁止規定違反事実を通報できるシステムを整備すると共に、同通報があった後の報告徴収・勧告・命令・公表・刑罰に至るまでの各手続を整備すべきである。また、その判断基準も整備して公表すべきである。

法テラスの活用の必要性

 上記の各通報は、弁護士を通じてなされることでより被害防止・被害救済の実効性が高まるものと考えられるから、法務省は、上記2項及び3項に述べた市民の通報が法テラスと連携する弁護士を通じて消費者庁に通報されるよう、予算措置を講じ、通報を考える市民からの相談の受理体制を整えるべきである。また、上記の各通報はそれ自体が公益性を有することから、民事法律扶助制度を改正するなどして、弁護士を通じて通報を行う市民の経済的負担ができるだけ小さくなるようにすべきである。

 5 国民への周知について

 上記運用が実効的になされるためには、被害者に限らず、広く一般市民が、新法の配慮義務違反や禁止行為違反について通報できることを周知する必要がある。
そこで、消費者庁及び法テラスは、一般市民に向け、新法の内容、上記通報制度について広く周知する努力をなすべきである。

 6 不法行為について

 新法施行前の被害については、これまでどおり不法行為法により救済をしていくことになるが、その範囲が新法施行により狭まることがあってはならない。
消費者庁は、新法が、寄附勧誘の不法行為該当性に関してこれまで裁判所で示されてきた解釈を限定する趣旨のものではないことも併せて周知徹底すべきである。

 7 最後に

 当連絡会は以上述べた通報や行政処分が適切に運用されるよう、各機関と協力してその運用の実効性が発揮されるよう尽力する所存である。
 また、新法制定に尽力された家庭連合(旧統一教会)被害者やその家族、とりわけ二世などの被害者の方々と協力して、被害の救済や新たな被害の抑止のため最大限努力する決意である。

 以上