◆抗議書
株式会社エスパルスへ

2007年(平成19年)6月7日

株式会社エスパルス
代表取締役 早川 巖 殿
全国霊感商法対策弁護士連絡会
代表世話人 弁護士 伊 藤 和 夫(東京)
            代表世話人  同  平 岩 敬 一(横浜)
            代表世話人  同  廣 谷 陸 男(札幌)
         (連絡先)東京都新宿区新宿1-15-9 さわだビル5F
              東京共同法律事務所
TEL:03-3341-3133 FAX:03-3355-0445
               事務局長 弁護士  山 口  広
         (連絡先)東京都港区西新橋3丁目2番1号
              共同ビル(西新橋)6階601号室
              田村町総合法律事務所
TEL:03-3431-4488 FAX:03-3431-4481
                      弁護士  渡 辺  博

 貴社の運営するJリーグ所属のサッカーチーム清水エスパルスが、宗教法人世界基督教統一神霊協会(以下「統一協会(統一教会)」といいます)の教祖文鮮明が実質的に主催する、「2007ピースカップコリア」に参加するとのニュースを受け、大変驚いております。以下の理由で、貴社に対し強く抗議するとともに、是非とも参加を取りやめるよう申し入れます。

 なお、当連絡会は、貴社に対し、この抗議書に対し、書面により貴社の見解を示すよう求めます。貴社の回答については、当連絡会が本年6月14日午後3時15分から弁護士会館で行う記者会見において、公表する所存です。

 当連絡会は、統一協会(統一教会)による霊感商法被害の救済と根絶のために、1987年5月全国の弁護士約300名により結成された弁護士の連絡会です。

 印鑑、念珠(数珠)、石板、壺、多宝塔、釈迦塔、人参濃縮液などを先祖の因縁を解放するためだなどと欺罔、脅迫し、不当に高い価格で売り付けたり、多額の貸付、献金を強要する、いわゆる霊感商法は、当連絡会に対する被害者の相談だけでも、2006(平成18)年12月までの約20年間に計2万7787件、被害合計は963億円余にのぼっており、現在もなおその被害が継続しております。当連絡会で集計した約20年間の被害相談集計結果の表を掲載した2006年版年報(資料1)を同封しますので、参照してください。

 霊感商法は、統一協会(統一教会)が、全国組織を駆使して、その信者らによって展開されていることはもはや公知の事実です。統一協会(統一教会)の元信者の裁判での証言や弁護士への説明により、信者らが貸付、献金、売上ノルマを与えられて、寝る暇もなく実績を上げるために活動させられている実態が、多くの裁判で認定され明らかになっています。多数の裁判例が、統一協会(統一教会)の霊感商法について違法と指摘し、損害賠償を命じています。判決の一覧(資料2)も同封致します。必要であればこれらの判決書もお送りしますので、ご指示ください。

 統一協会(統一教会)は、数多くの裁判所の判決が違法と断じている霊感商法を現在もなお、ほぼ同じ手口で繰り返し、多数の悲惨な被害者を作り出し、これら被害者の中には自殺に追い込まれる場合も少なくありません。統一協会(統一教会)の霊感商法の手口は、この20数年ほとんど変わっていません。自らの正体を隠して、資産家の独居老人、高齢者夫婦、未亡人、独身女性、主婦等に近づき、その有する資産をことごとく統一協会(統一教会)に交付させるために、人生について勉強しませんかなどと述べてビデオセンターに誘い込み、先祖の因縁を口実にした欺罔、脅迫を執拗に行い、預貯金を解約させ、自宅などの所有不動産を売却させ、銀行、サラ金から借金をさせるなどして、高額な献金をさせ、また、印鑑、念珠、大理石の壷、着物、宝石、絵画等の代金名下にお金を支払わせています。

 こうして統一協会(統一教会)が日本での霊感商法で集めた莫大な資金のほとんどは、統一協会(統一教会)の教祖文鮮明のもとに集められます。文鮮明は、この潤沢な資金を用いて、韓国国内、アメリカ、南米などで広大な土地を買い集め、世界各国で様々な企業群を設立し、日本、韓国、アメリカ等世界各国の政治家への資金提供を行っています。

 文鮮明は、2002(平成14)年6月12日、「鮮文平和カップ」を創設しました。文鮮明は、統一協会(統一教会)の月刊機関誌『ファミリー』2002年8月号において、「ゆえに私は、今回、平和世界の創建を願い、『鮮文平和カップ』を制定したのです。」、「『鮮文平和カップ』は、神様が理想とされた創造本然の世界を成し遂げるための宗教と科学、政治と経済、女性、青年、体育など、各界、各分野の努力を一点に集め、人類が一つの大家族となることを念願する祝祭の場となることでしょう。」(資料3−1)と述べています。

 そして、文鮮明は、2003(平成15)年7月15日、韓国ソウルにおいて、「2003ピースカップコリア」を開催し、開会宣言も行いました。これについて、文鮮明は、統一協会(統一教会)の月刊機関誌『ファミリー』2003年8月号において、「私は、教育部門と芸術分野でも世界的な基盤を築いてきました。また、今月十五日に開幕する、世界の有名なクラブのサッカー対抗戦である『鮮文ピースキングカップ(ピースカップコリア)』大会も、すべて心情文化平和世界のための一連の活動です。」(資料3−2)と述べています。ちなみに、文鮮明は、『ファミリー』2003年9月号(資料3−3)において、「今から、オリンピック大会も、わたしの手で、FIFA(国際サッカー連盟)も、サッカー競技も、わたしの手で消化するでしょう。」と述べ、オリンピックもワールドカップも自らが主催するようになると豪語しています。

 文鮮明は、この「2003ピースカップコリア」を「世界文化体育大典2003」の一部門として開催しましたが、同じ「世界文化体育大典2003」の一部門として、「4億双4次国際合同祝福結婚式」も同時期に開催しています。この統一協会(統一教会)が主催する合同結婚式について、日本の最高裁判所は、婚姻意思の不存在を主張した元信者女性の主張を認容し、統一協会(統一教会)の合同結婚式後に入籍した日本人信者男女の婚姻の無効を認めています。また、最高裁判所は、この合同結婚式に参加させる行為は、信者の婚姻の自由を侵害する違法行為であるとも指摘しています(資料2参照)。

 このように、ピースカップコリアは、文鮮明が、日本での反社会的な霊感商法によって集めた資金をもとに、自らの権威を高め、霊感商法に奔走する信者らの志気を鼓舞するために、合同結婚式と一体のものとして開催するものであって、健全なスポーツの精神に反するものです。

 「2003ピースカップコリア」の優勝チームに授与された賞金は、ワールドカップの優勝賞金と肩を並べるほどの破格の200万ドルでした。出場したプロサッカーチームに対する出場手当も破格のものだったと言われています。今回の「2007ピースカップコリア」の出場手当、賞金も同様に破格のものであると言われていますが、これら資金のほとんどは、日本での霊感商法により、日本の善良な市民から違法に奪い取ったものです。

 「2007ピースカップコリア」を主催するのは、2003年のときと同様に、表面上は「鮮文(ソンムン)平和サッカー財団」ですが、その理事長は文鮮明の右腕とされる、統一協会(統一教会)組織でナンバー2の地位にある郭錠煥(クァクチョンファン)であることから明らかなとおり、実質的には文鮮明です。

 郭錠煥は、文鮮明の指示により、文鮮明の経営するワシントンタイムズの会長、同じく文鮮明の創設したKリーグ所属のプロサッカーチームである城南一和のオーナー、文鮮明が創設した世界平和超宗教超国家連合(IIFWP)世界会長、さらに文鮮明が創設した世界平和統一家庭連合世界会長を務め、現在、韓国プロサッカー連盟会長も務めています。「世界文化体育大典2003」の大会組織委員長を務めたのも郭錠煥であり、おそらく「世界文化体育大典2007」の大会組織委員長を務めるのも郭錠煥だろうと思われます。

 貴社が運営する清水エスパルスは、静岡県を代表するきわめて人気のあるサッカーチームであり、サッカー選手を夢見る青少年にとってはあこがれの存在であり、サッカーファンにとっては重要なチームです。清水エスパルス傘下には、プロ選手を目指すたくさんのジュニア、ユース選手も所属しています。

 今回、貴社が、清水エスパルスを、「2007ピースカップコリア」に参加させることを決定したことは、日本における統一協会(統一教会)の霊感商法の被害者や合同結婚式に参加を強要された日本人信者の家族を侮辱し、霊感商法に携わり、また合同結婚式の参加者集めに奔走する日本人統一協会(統一教会)信者を鼓舞することになり、この結果清水エスパルスを愛し、応援するファン、サポーターに対する背信行為となるものです。

 霊感商法の根絶を目指し、霊感商法の被害者救済に携わってきた当連絡会は、貴社に対し、「2007ピースカップコリア」への参加決定について抗議するとともに、ただちに参加を取りやめるよう、本書面をもって申し入れます。

 なお、この抗議書は、貴社の主要な株主、清水エスパルスのスポンサー、清水エスパルスのサポータークラブ、報道機関にも送付いたします。

 添 付 書 類
 1.当連絡会の2006年版年報(資料1)
 2.統一協会(統一教会)の責任を認めた判決の概要(資料2)
 3.ファミリー(統一協会(統一教会)の月刊機関誌)2002年8月号抜粋(資料3−1)
        同          2003年8月号抜粋(資料3−2)
        同          2003年9月号抜粋(資料3−3)




◆通知書

2007年(平成19年)6月15日

(清水エスパルスのピースカップコリア参加問題に関して)
静岡市清水区三保2695−1
株式会社エスパルス
代表取締役社長 早川 巖 殿
全国霊感商法対策弁護士連絡会
(連絡先)東京都新宿区新宿1−15−9さわだビル5階
東京共同法律事務所
TEL 03-3341-3133 FAX 03-3355-0445
事務局長 弁護士  山 口  広
(連絡先)東京都港区西新橋3−2−1
共同ビル(西新橋)6階601号室
田村町総合法律事務所
TEL 03-3431-4488 FAX 03-3431-4481
弁護士  渡 辺  博
 
当連絡会の6月7日付抗議書に対して、6月12日付の貴社回答書を受領しましたが事態の重大性に全く無自覚なまことに残念な内容であり、このまま放置することができませんので、重ねて申し入れを致します。と同時に、当連絡会としては、近日中に、貴社の責任者との間でのこの問題に関する面談も希望いたします。

 第1に、回答書では、「本大会の過去(2003年、2005年)の運営状況を勘案し、特定の団体の利益を誘導するような大会ではないと判断した」と書かれていますが、一体どのような過去の運営状況を調べたのでしょうか。

 すでに抗議書に同封した資料第3の1、2、3と本書に同封する資料第4ないし8をご覧下さい。これらはいずれも統一協会(統一教会)の正規の機関誌であり、信者らが毎号精読しているものです。

 資料第3の1、2、3は、鮮文平和カップ(ピースカップコリアのことです)が、文鮮明の指示で始められたもので、2003年8月に開かれた大会は、統一協会(統一教会)の行う一連の宗教行事の一環としてなされたものであることを明示しています(資料第3の2P41)。資料第4のP58から、文鮮明がその特異な宗教理念を宣伝するためにアベル的ワールドカップ(ワールドカップより上のランクという意味)の鮮文カップを提唱したと明示しています。

 資料第5では、文鮮明の右腕の郭錠煥が大会委員長としてあいさつしたのにつづいて文鮮明が2003年大会の開幕を宣言したこと、優勝チームへのトロフィーと賞金授与も文鮮明がしたと明示され、授与の時の写真が掲載されています。

 資料第6では郭錠煥が統一協会(統一教会)の資金力と組織力をあげて行った世界文化体育大典組織委員長として文鮮明を称揚しつつ挨拶していることが明示されています。

 資料第7は、2005年大会も文鮮明の開幕宣言で開始されたこと、2007年からは「サッカーのピースカップも大典(統一協会(統一教会)が主催する世界文化体育大典WCSFのこと)の一環として開催します」と文鮮明が講演したと明示しています。

 資料第8は、2007年のピースキングカップ(ピースカップコリアのこと)が「真の父母様(文鮮明夫婦のこと)の米寿記念行事」のひとつであることが明示されています(77頁)。

 なお、資料第9は統一協会(統一教会)信者向けの内部文書であり、韓国のサッカーチーム「城南一和」を統一協会(統一教会)が組織的に応援していることを示すものです。「一和の勝利とともに、2月末までの目標勝利(献金ノルマ達成のことです)を必ず果たして参りましょう!」と明示されているように、統一協会(統一教会)員はあらゆる組織的できごとの成功を献金と人集めの動機付けに使っています。

 これだけの資料があっても、今大会が統一協会(統一教会)、文鮮明の「利益を誘導するような大会」でないという判断が誤りだったと認められませんか。重ねて回答下さい。

 また、貴社回答書には「貴連絡会の活動を妨害する意図は全くございません」と書かれていますが、著しい誤解です。当連絡会は、これ以上霊感商法の被害を拡大するようなことは控えていただきたいと申し入れしているのです。多くの日本市民に著しい損害を生じさせ続け、多くの人の人生や家庭を崩壊させて得られた資金で開かれる大会に無自覚に出場してファンを失望させないでいただきたいと要望しています。

 是非再検討下さい。
 なお、この申し入れの趣旨は3月14日の記者会見でも説明しました。本通知書も公表致します。
 面談については、当連絡会から貴社宛に別途ご連絡させていただきます。