◆要望書
国立大学協会へ

2006年(平成18年)12月4日
国立大学協会 御中
全国霊感商法対策弁護士連絡会
代表世話人 弁護士 伊 藤 和 夫(東京)
代表世話人   同   平 岩 敬 一(横浜)
代表世話人   同   廣 谷 陸 男(札幌)
         (連絡先)東京都新宿区新宿1-15-9 さわだビル5F
              東京共同法律事務所
TEL:03-3341-3133 FAX:03-3355-0445
               事務局長 弁護士 山 口 広
東京都港区西新橋3-2-1 共同ビル6F601号室
              田村町総合法律事務所
TEL:03-3431-4488 FAX:03-3431-4481
               連絡担当 弁護士 久 保 内 浩 嗣
第1  要望の趣旨
 貴協会におかれては、貴協会の会員である各国立大学に本要望書を配布されたい。
 各大学の学生指導課におかれては、反社会的宗教団体に学生が関わることによる被害を防止するため、情報収集や学生への注意喚起につとめるとともに、具体的事例については機敏に保護者に情報提供するようつとめられたい。

第2

 要望の理由
 全国霊感商法対策弁護士連絡会(以下、「当連絡会」といいます。)は、1987年5月、文鮮明を教祖とする世界基督教統一神霊協会(以下、「統一協会(統一教会)」といいます。)が、その資金集めのために全国で組織的に行ってきた、いわゆる霊感商法の被害者の救済と被害予防のために、全国300余名の弁護士が賛同して設立された団体です。
 当連絡会は、統一協会(統一教会)の信者やその家族の相談を受けるほか、企業や官公庁、公的団体等からの統一協会(統一教会)についての問い合わせにも応じてきました。設立以来、年間平均して1000件程度の問い合わせを受けております。
 当連絡会は、統一協会(統一教会)による霊感商法被害の根絶と被害者救済を目的としていますが、当連絡会に所属する各弁護士は、それぞれ、統一協会(統一教会)以外の大小様々な反社会的宗教団体の問題に携わっております。
 最近、「摂理」という宗教団体が全国の大学に浸透し、多くの在校生、卒業生が取り込まれ、中には教祖から性的被害を受けた女性がいるという事実が判明し、これが報道されたことから、反社会的宗教団体の大学における活発な活動が社会的により一層明らかになりました。
 申し上げるまでもありませんが、一旦、反社会的宗教団体に取り込まれてしまった学生に対し、社会ルールに従った行動をするよう指導することは極めて困難です。従って、学生が反社会的宗教団体に取り込まれることがないよう事前に予防することが重要です。
 大学関係者各位におかれましては、これまでも大学内部における反社会的宗教団体の活動に対して、様々な対策を講じられたことと思いますが、当連絡会は、改めて、大学関係者各位に対しまして、以下の点を要望いたします。これは決して特定宗教団体に対する差別ではありません。学生の人権を守り、学生生活を全うするためになされるべき教育措置であることを認識していただく必要があります。


 要望の趣旨の内容をより具体的に述べますと次のとおりです。
(1) 反社会的宗教団体についての情報収集に努めて下さい。
 反社会的宗教団体による学生の被害を予防するには、まず、大学側が当該宗教団体について十分に把握しておく必要があります。日頃から、報道、インターネットなどで、反社会的宗教団体についての情報を収集してください。
 また、反社会的宗教団体の多くは、正体を隠して学生を勧誘するため、各大学内部にダミーサークルを作っています。大学内部におけるダミーサークルの名称、実態、勧誘方法などの情報を収集してください。
(2) 反社会的宗教団体について大学間で情報の交換を行い、情報を共有してください。
 反社会的宗教団体は、より多くの信者の獲得を目的としており、特定の大学を狙うということはありません。大学の垣根を越えたインカレサークルを利用して学生を勧誘します。そのため、各大学が個別に情報を収集しても、その実態がつかめないおそれがあります。そのため、各大学学生指導課では特に近隣の大学と情報を交換し、連携して宗教団体の実態把握に努めて下さい。
(3) 反社会的宗教団体の勧誘手法や問題点について、ビラの作成、配布や専門家による講演会を開催するなどして、学生に告知し、予防策を講じてください。
 学生が、反社会的宗教団体の存在、勧誘手法や問題点を把握していれば、警戒感を持って学生生活を送り、反社会的宗教団体に騙されるおそれは少なくなります。学生に対して、反社会的宗教団体についての啓蒙活動を随時行って注意喚起につとめてください。
(4) 新入生に対しては、入学後、早い段階で反社会的宗教団体についてのガイダンスなどを行ってください。
 学生、特に新入生は、まだ社会経験に乏しく、価値観が確立していないため、反社会的宗教団体の標的にされます。カリキュラムに、反社会的宗教団体の問題点、勧誘方法などについてのガイダンスを実施して注意喚起につとめてください。
(5) 各大学は、在校の学生やその保護者からの、反社会的宗教団体についての相談窓口になって下さい。
 各大学には、様々な経緯でカルト宗教団体についての相談が持ち込まれると思います。その際には、まず、当該学生が関わっている団体を特定し、当該団体について脱会支援をしている専門家を探してください。
 学生本人から相談があった場合
 本人が気がつき始めているのですから、何よりも正しい情報を提供して、正確な情報に基づく適切な選択をさせることが重要です。その上で必要なら専門家を紹介し、相談するようにアドバイスしてください。
 学生の家族から相談があった場合
 専門家を紹介し、相談するようにアドバイスしてください。そして、家族が学生本人を直接説得しようとしたり、無理矢理やめさせようとしたりすることは、事態を悪化させるだけなので、絶対にしないように指示してください。また、専門家に相談していることを学生本人に気づかれないように注意するよう指示してください。
 反社会的宗教団体に関わっている学生を大学側が特定した場合
 学生の家族に連絡し、専門家を紹介し、相談するようにアドバイスしてください。そして、学生本人に確認する前に、専門家の指示を仰ぐように指導して下さい。その団体に無理解なままに、強引に学生本人を直接説得しようとしたり、無理矢理やめさせようとしたりすることは、事態を悪化させることが少なくありません。正確に本人の関わっている状況を把握したうえで、適切に対処するよう保護者に助言して下さい。また、専門家に相談する場合には、相談していることを学生本人に気づかれないように注意するよう指示してください。
 大変微妙な問題ですが、学生の人生を破壊する団体から守ることは、大学側の責任とも考えられます。是非とも積極的に対処されるよう、重ねて要望します。


 相談窓口
(1) 統一協会(統一教会)
全国霊感商法対策弁護士連絡会
 電話:03-3358-6179
 FAX:03-3353-4679
 HP:http://www1k.mesh.ne.jp/reikan/japanese/index-j.htm
(2) 摂理
田村町総合法律事務所
弁護士 渡辺 博
弁護士 久保内 浩嗣
 電話:03-3431-4488
 FAX:03-3431-4481
 メール:office@tamuraho.com
以 上
この要望書は、公立大学協会、私立大学連盟、私立大学協会へも送付してあります。