平成28年1月13日判決言渡
平成24年(ワ)第32969号 損害賠償請求控訴事件
口頭弁論終結日 平成27年10月7日
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判 決
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東京都品川区
原 告 A
同訴訟代理人弁護士 山 口 広
同 木 村 壮
東京都渋谷区松濤1丁目1番2号
旧名称 世界基督教統一神霊協会
被 告 世界平和統一家庭連合
同代表者代表役員 徳 野 英 治
同訴訟代理人弁護士 福 本 修 也
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主 文
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1
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被告は、原告に対し、3428万6623円及びこれに対する平成21年8月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え
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原告のその余の請求を棄却する。
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3
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訴訟費用はこれを3分し、その2を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
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4
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この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
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事 実 及 び 理 由
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第1請求
被告は、原告に対し、1億0046万6623円及びこれに対する平成21年8月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
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第2事案の概要
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1
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本件は、被告の信者であるBの元夫である原告が、婚姻中に、Bが、原告の意に反して、原告名義の銀行等の口座から長期間かつ多数回にわたり出金をするなどして被告に献金等の名目で金銭を交付し続けて原告に損害を与えたのは、被告の組織的活動等によるものであるなどと主張して、原告が、①被告の組織的な不法行為に基づき、②Bに献金を実行させた被告の幹部信者を被用者とする使用者責任に基づき、③Bを被用者とする使用者責任に基づき、又は④不当利得返還請求権に基づき、被告に対し、経済的損害8446万6623円、慰謝料800万円及び弁護士費用800万円の合計1億0046万6623円並びにこれに対する最終の損害発生の日の翌日である平成21年8月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
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2
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前提事実
以下の事実は、当事者間に争いがないか、掲記の証拠及び弁論の全趣旨により認められる。
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(1)
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ア 原告(昭和29年生)とB(同年生)は、昭和55年に結婚し、両名の間には、長女(昭和57年生)及び二女(昭和60年生。以下二女という。)がいる。
イ 原告は、昭和59年、東京都品川区にあるマンションを購入し、B、長女及び二女と同居していたが、平成7年、原告の亡母の相続財産及び原告の父の出捐により現住所に住居を新築して、B、長女、二女及び原告の父と同居するようになり、上記マンションは売却した。
ウ 長女は、平成6年4月に中学校に、平成9年4月に高等学校に、平成12目年4月に大学に、それぞれ入学し、平成16年3月に同大学を卒業した。二女は、平成10年4月に中学校に、平成13年4月に高等学校に、平成16年4月に大学に、平成20年4月に大学大学院に、それぞれ入学し、平成23年3月に同大学院を卒業した。
エ 原告は、平成22年12月頃、Bと別居するようになり、平成23年7月東京家庭裁判所に離婚調停を申し立て、同年10月、原告がBに対して解決金320万円の支払義務があることを認 め、その支払を約した上で、調停離婚が成立した。
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(2)
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被告は、韓国国籍の故文鮮明を創始者かつ再臨の救世主であるとする宗教団体であり、日本国内においては昭和39年に設立登記された宗教法人である。
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(3)
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Bは、原告と婚姻した直後、それまで勤務していた〇〇を退職し、それ以降、原告と離婚するまで専業主婦であった。Bは、昭和57年10月頃、被告の信者が自宅に印鑑の訪問販売に来たことがきっかけで伝道を受け、昭和59年7月頃信者として被告に入会し、平成13年6月26日までは大田教会に、同日以降は渋谷教会に所属し、信者としての活動を(中略)している。
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(4)
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原告所有の東京都品川区所在のマンションは、平成7年6月に3700万円で売却され、同年8月までにその売却代金の支払を受けるものとされ、仲介手数料を控除すると、その残額は3579万4900円となるところ、同金員についてはBが管理していた(別紙損害一覧表の番号1の「年」「月日」欄の「平成7年」「8月15日」及び「Bの支出行為」欄の「35,794,900」は、使途に争いがあるものの、Bが同日以降に上記3579万4900円を使用したことを表示している。以下、この使用に係る支出を「本件支出1」という。)。
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(5)
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Bは、原告名義の甲銀行品川支店、乙銀行本店、丙金庫の各口座の通帳、カード及び届出印を管理しており、本件各口座に関する金銭の出納は全てBが行っていた。Bは、別紙損害一覧表の番号2~90、92~148の「年」「月日」欄記載の年月日に、その管理する通帳等を用いて、「引き出した金融機関」欄記載の口座から、「Bの支出行為」欄記載の金額を引き出した(以下、同表の番号91の原告名義の岩手銀行××支店からの引出しを含めて番号2~148の各引出しに係る支出を、同表の番号を付して「本件支出2」、「本件支出3」などという。)。
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3
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争点及びこれに対する当事者の主張
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(中略)
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第3 当裁判所の判断
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1
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争点⑴(使途不明金の額)について
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(1)
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使途不明金の額
本件支出1~148について、Bは、別紙損害一覧表「Bの説明」欄記載のとおり、使途について述べるところ、その陳述は、①教育費のみに使用したと述べるもの、②生活費以外に使用したと述べて具体的な使途を明らかにしたもの(①を除く。)。③ア生活費に使用したと述べるもの又は具体的な使途を明らかにしないものに分類されるから、それぞれについて引き出した金銭が使途不明金と認められるかどうか検討する。
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ア
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①教育費のみに使用したと述べるもの(本件支出5、7、17、23、25、26、54、56、64、66、88)について
証拠によれば、本件訴訟を提起するに当たって、原告名義の口座から引き出された資金のうち、教育費については、被告の幹部信者であるOからの回答や、Bとの話合いにおいて確認した支出に関するBの認識を基に計算し、これを除外した上で使途不明金の基礎となる支払を特定していることが認められる。
(ア) 本件支出5の50万円について、別紙損害一覧表「原告の主張」欄のとおり、平成8年度は、長女の教育費として159万3600円を控除しているから、それとは別途、本件支出5が教育費として必要であったとは認められず、使途不明金であると認められる。
(イ) 本件支出7の50万円について、別紙損害一覧表「原告の主張」欄のとおり、平成9年度は、二女の教育費として273万円を控除しているから、それとは別途、本件支出7が教育費として必要であったとは認められず、使途不明金であると認められる。
(中略 ※(ウ)から(カ)も同様に個別に判断されている。注記)
(キ) 本件支出66の48万円について、別紙損害一覧表「原告の主張」欄のとおり、平成18年度は、長女及び二女の教育費として111万0200円を控除しているから、それとは別途、本件支出66が教育費として必要であったとは認められず、使途不明金であると認められる。
(ク) 本件支出88の50万円について、前提事実⑴ウによれば、二女が大学院に入学したのは平成20年4月であって、それよりも1年以上前に大学院の入学金を支払うことは不自然であるから、Bの陳述は採用することができず、使途不明金であると認められる。
したがって、Bが教育費のみに使用したと述べる本件支出5、7、17、23、25、26、54、56、64、66、88については、いずれも使途不明金であると認められる。
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イ
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②生活費以外に使用したと述べて具体的な使途を明らかにしたもの(①を除く。)(本件支出1、3、4、13、14、15、20、30~32、37、40、41、53、59~63、65、68、71、84、85、91、92、141~144)について
(ア) 本件支出1のマンションの売却代金残金3579万4900円については、証人Bは、1500万円ずつ2枚の証書を作成して、あさひ銀行に預けたような気がし、証書は貸金庫に入れた旨証言するが、そもそも貸金庫の契約を確認することができないなど裏付けを欠き、採用することができず、他に合計3000万円の証書作成を認めるに足りる証拠はない。また、教育費については、相当額の支出を既に控除しており、これとは別途370万円余りもの支出を要するとは認められないから、これらの点に関するBの陳述は採用することができない。もっとも、経済革命倶楽部に支払ったとする200万円については、弁論の全趣旨によれば、経済革命倶楽部が、当時多数の消費者から高金利をうたって莫大な資金を集めており、平成9年にその主犯が詐欺罪で逮捕、起訴されたことが認められるから、Bの陳述を排斥することができず、3379万4900円の限度で使途不明金と認められる。
(イ) 本件支出3及び4の各50万円については、原告とBは、平成7年に現在の原告の住居に引っ越しているところ、引っ越してすぐに必要となるカーテン代を1年半近く経過してから支出するのは不自然であって、その点についての合理的な説明がないことからすれば、Bの陳述は採用することができず、上記各50万円は使途不明金であると認められる。
(ウ) 本件支出13及び14の各30万円につて、部屋の内装費用は、一般に生活費とは別に臨時の支出として必要となるものであり、原告自身、この頃に二女の部屋の内装工事を行ったことを否定していないことからすれば、部屋の内装費用として使用したというBの陳述を排斥することはできず、使途不明金であるとは認められない。
(エ) 本件支出15の90万円については、Bの父が自動車購入費を負担し、原告はBの父に対して礼を述べており、その際に、原告が購入代金の一部を負担したことについての発言はなかったことからすれば、原告が購入代金の一部を負担したとは認められず、Bの陳述は採用することができないから、90万円は使途不明金であると認められる。
(オ) 本件支出20の100万円に付いて、証人Bは、Bが、(中略)他人に金を貸したことがあり、まだ返済されていないものもある旨証言するところ、これを排斥するに足りる事情もないことからすれば、使途不明金であるとは認められない。
(中略 ※(カ)から(セ)までも同様に個別に認定されている。注記)
(ソ) 本件支出91の100万円について、そもそもBが岩手銀行××支店の原告名義の口座をBが管理していたことを認めるに足りる証拠がなく、また、原告がBに現金を交付したとするBの陳述を排斥することができないから、使途不明金であるとは認められない。
(タ) 本件支出92の42万5735円について、平成19年度の税金については231万8660円を控除して、使途不明金の基礎となる支出を特定しており、本件支出92の4日後の平成19年4月20日に乙の口座から107万7000円が支払われ、この分の引出しは使途不明金の算定の基礎となっておらず、これとは別途に税金のための支出を要するとは認められないから、Bの陳述は採用することができず、使途不明金であったと認められる。
(チ) 本件支出143及び144については、その時期に海外旅行をしていた可能性を排斥できないから、使途不明金であるとは認められない。
(ツ) Bは、本件支出62の30万円、本件支出141の40万円、本件支出142の30万円については、いずれも長女の海外旅行費用として引き出され、本件支出71の40万円については、夏の旅行費用として引き出されたと述べ、原告はこれを争わないから、これらは、使途不明金とは認められない。
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ウ
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③生活費に使用したと述べるもの又は具体的な使途を明らかにしないものについて
(ア) まず、以下の支出については、被告が自認する被告への献金の時期に照らして、Bが引き出した金銭は、被告へ献金されたものと推認することができる。
a 本件支出46の80万円について、別紙損害一覧表「被告が認めた献金額」欄記載のとおり、同日に80万円が献金されている。
b 本件支出47の33万円について、別紙損害一覧表「被告が認めた献金額」欄記載のとおり、15日後の平成15年10月21日に60万円が献金されている。
c 本件支出70の15万円について、別紙損害一覧表「被告が認めた献金額」欄記載のとおり、同日に15万円が献金されている。
d 本件支出72の30万円について、別紙損害一覧表「被告が認めた献金額」欄記載のとおり、3日後の平成18年8月28日に21万円、同年9月8日に9万円がそれぞれ被告に対して献金されている。
(中略 ※eからmまで個別に認定されている。注記)
n 本件支出132の20万円について、別紙損害一覧表「被告が認めた献金額」欄記載のとおり、同日に20万円が献金されている。
o 本件支出137及び138の合計100万円について、別紙損害一覧表「被告が認めた献金額」欄記載のとおり、本件支出137の翌日であり、本件支出138の当日である平成20年11月6日に100万円が被告に献金されている。
p 本件支出148の15万円について、別紙損害一覧表「被告が認めた献金」欄記載のとおり、翌日である平成21年8月26日に15万円が献金されている。
(イ) 他方、以下の各月の引出しについては、Bによる引出行為と対応する被告への献金は認められないところ、証拠によれば、①Bは、家族の服装、食品等についてできるだけ質の高いものを使うよう心がけており。原告の家庭における1か月の平均的な生活費は50万円程度であること、②原告が本件で問題にしている引出行為に係る額は、原告名義の口座からの引出金額全額から1か月の平均的な生活費である約50万円、教育費、税金等の必要な費用を控除した残額を超えないことが認められるから、原告名義の口座から引き出した金額を全て生活費に使用したとする被告の主張はそのまま採用することはできない。
もっとも、一般的に、月ごとにみた場合、高価品の購入、冠婚葬祭等で臨時の支出が必要となった結果、1か月の平均的な生活費とは別に臨時の支出が必要となることもあり得るとこ ろ、その額は、多くとも月の平均的な生活費の50%、すなわち25万円と認めるのが相当であるから、毎月の引出額のうち前記ア、イで検討した支出及び前記ウ(ア)で被告への献金であると認めた支払を除いた引出額の合計額から、25万円を控除した額が使途不明金となると推認することができる(なお、引出額の合計が25万円以下の場合は使途不明金は0円とする)。 そこで、以下、月ごとに検討する。
平成8年1月については、本件支出2のとおり、40万円の引出しがあったところ、25万円を控除すると、使途不明金は15万円であ る。
平成9年12月については、本件支出6のとおり、100万円の引出しがあったところ、25万円を控除すると、使途不明金は75万円である。
平成10年7月については、本件支出8のとおり、50万円の引出しがあったところ、25万円を控除すると、使途不明金は25万円であ る。
平成10年10月については、本件支出9のとおり、50万円の引出しがあったところ、25万円を控除すると、使途不明金は25万円である。
平成10年12月については、本件支出10のとおり、45万円の引出しがあったところ、25万円を控除すると、使途不明金は20万円である。
(中略 ※以下41項目についても個別に25万円控除の可否が判断されている。注記)
平成20年7月については、本件支出135のとおり、100万円の引出しがあったところ、25万円を控除すると、使途不明金は75万円である。
平成20年11月については、献金と認定された本件支出137、138の外に、本件支出136、139のとおり、51万円の引出しがあったところ、25万江を控除すると、使途不明金は26万円である。
平成21年1月については、本件支出140のとおり、40万円の引出しがあったところ、25万円を控除すると、使途不明金は15万円である。
平成21年5月については、本件支出145のとおり、23万円の引出しがあったところ、25万円を控除すると、使途不明金は0円であ る。
平成21年6月については、本件支出146のとおり、30万円の引出しがあったところ、25万円を控除すると、使途不明金は5万円であ る。
平成21年8月については、献金と認定された本件支出148の外に、本件支出147のとおり、30万円の引出しがあったところ、25万円を控除すると、5万円が使途不明金である。
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エ
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以上によれば、別紙損害一覧表「裁判所の判断」欄記載のとおり、原告名義の預金口座からの引出しにおける使途不明金又は献金の合計額は、7472万4635円であり、これに対し、証拠によれば、原告名義の口座への原告自身の給与、退職金、原告の父からの生活費等の収入、原告の父から相続した財産等以外の入金額は、同表「Bの入金額」欄記載のとおり、合計で1273万8012円であると認められるから、これを控除した使途不明金又は献金の残金は、6198万6623円となる。
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(2)
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(中略)
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(3)
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清平修練会における支出
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ア
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掲記の証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア) Bは、韓国の天宙清平修練苑で行われる清平修練会とう式典に年2~3回の頻度で参加していた。
(イ) 清平修練会に参加するに当たって必要となる先祖解怨献金は、1~7代までは1氏族当たり70万円(夫婦を基本とすると、夫の父方、母方で2氏族、妻の父方及び母方で2氏族となり、合計4氏族で280万円となる。)、8代以降は1氏族7代分当たり3万円がかかる。
(ウ) Bは、合計8氏族について210代までの先祖の解怨を目指しており、先祖解怨献金として合計約1000万円を清平修練会において支払った。
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イ
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一方、先祖祝福献金については、Bが幾ら支払ったのかを裏付ける証拠がなく、認めることはできない。
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(4)
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被告への献金
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ア
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掲記の証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア) Bは、平成7年以降、少なくとも平成19年までの13年間にわたり、月例献金として毎月3万円を被告に献金しており、さらに、平成18年頃から月1、2回、数千円程度の礼拝献金をしていた。また、これら以外に、Bは、渋谷教会に所属していた時期において、被告に対し、約1000万円の献金をし、また、大田教会に所属していた時期にも数百万円を献金した。
(イ) Bは、平成9年7月頃、被告が主催する合同結婚式に参加し、祝福献金として140万円を支払った。
(ウ) Bは、平成11年頃、被告に対し、総生畜献金として210万円を払った。
(エ) Bは、平成18年3月29日、本殿聖地献金を被告に献金したとして、被告から感謝状を受領した。本殿聖地献金については、1家族当たり140万円を献金するよう指示があった。
(オ) 被告においては、献金の目標を実現した人に、表彰状や記念品を授与することがあったが、Bは、氏族公臣賞、母国公臣賞、母国平和公臣賞及び家庭公臣賞をそれぞれ受賞した。そして、氏族公臣賞は、累計で数百万円単位の献金をした人に、母国平和公臣賞は累計で数千万円単位の献金をした人にそれぞれ授与されていた。
(カ) Bは、累計で430万円の献金をした対価として交付される天聖経を所持していた。
(キ) 被告においては、祈願書に願い事を記入させて奉納させており、金色の祈願書1枚につき2万円、銀色の祈願書1枚につき1万円、銅色の祈願書1枚につき5000円かかるところ、Bは、祈願書を複数枚作成した。
(ク) 原告宅には、弥勒仏が4体置かれていたが、弥勒仏は、被告において大きさに応じて40万円、70万円、120万円で販売され、信者に購入させていた。
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イ
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(ア) 被告は、被告への献金額を客観的、合理的に裏付ける証拠はなく、そもそもBが原告名義の口座から引き出した資金の使途は、生活費、教育費及び被告への献金以外にも様々であり、口座から引き出された金額から生活費、教育費を控除した残りが全て被告に献金されたとはいえないと主張する。
しかしながら、証拠によれば、前記⑴の使途不明金を算定するに当たっては、原告名義の口座から引き出されている金額から、1か月の平均的な生活費として約50万円、教育費、税金等の必要な費用を控除し、さらに、臨時の支出と考えられる費用を控除していること、また、上記アの認定事実からすれば、Bは、被告がBからの献金として把握していると主張する944万4000円だけでなく、被告に対し、他にも献金や物品の購入等を通じてさらに多額の支出をしていると考えられることからすれば、前記⑴で認定した使途不明金のうち、(中略)前記⑶の清平修練会において支払った1000万円を控除した残りについては、全て被告への献金等として支出されたものと推認することができ、被告の主張は採用することができない。
(イ) また、証人Bは、原告宅にあった各種の物品は、人から預かった物が含まれていると証言するが、誰から何の目的で預かったのか、いつ返却する予定であるかも不明であることからすれば、採用することはできない。また、証人Bは、Bが受け取った表彰状、感謝状等は、B個人の活動結果ではなく、Bとその教域に属する他の信者との活動結果であると証言するが、証拠によれば、表彰状、感謝状等の名宛人はB個人ないし原告及びBであって、B個人に贈られた、ものであると解されることからすれば、同証言は採用することができない。
(ウ) さらに、被告は上記アで認定した金銭の使途が記載されている甲B63のメモは、原告の質問に対し記憶がはっきりしない旨Bが回答した場合でも、断定的に数字を記載されており、信用できないと主張する。しかしながら、証拠によれば、このメモは、Bによる引出行為が発覚した後、なぜこのような多額の引出しをしたのかについて、原告とBの間で平成21年9月5日、6日に話合いを行うこととなり、その際に、一つ一つの事項について確認し、話し合いながら、二人で記入して作成されたものであり、この時点では、原告とBはいずれも離婚する意思まではなかったことからしても、細かい部分はともかく、その記載内容は概ね信用することができ、被告の主張は採用することができない。
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2
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争点⑵(不法行為に基づく損害賠償請求)について
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(1)
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被告が、組織的に、自分の収入や財産がない壮婦に対し、夫の財産を夫の意思に反して献金するように指示していたこと
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ア
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掲記の証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア) 被告に対する献金等について
a 被告は、信者に対し、信者は氏族メシアとして、家系や先祖を代表して、家族を救い、先祖を救う立場にあり、そのためには、献金や伝道をすることを使命としており、これに従わない場合には、自分も家族も不幸になり、先祖も救われないと指導していた。そして、壮婦は、献金して夫を救うこと、夫の家系を救うことこそが信者としての使命であるとして、夫や親の金、子のために積み立てた金を拠出するように指示されていた。
b 被告は、信者に対し、どれくらいの財があるのかを聞き取るとともに、壮婦の場合には、夫の金をどれだけ管理し、自己の判断でどれだけ金を動かせるかを聞き取って、上位の立場にあり指導役の信者であるアベルに報告していた。そして、アベルは、信者に対し、家族の対応を知って、家族との接し方や献金の仕方を指導し、家族の状況に変化があれば逐一報告をするように指示をし、夫の意思に反して献金をすることに躊躇していた信者に対しては、説得をしていた。被告においては、アベルの指示は絶対に服従しなければならないとされていた。
c 被告は、伝道される過程にあるゲストや信者について献金の目標を把握した表を作成し、また、実績及び目標まで幾ら残っているかについても公表されていた。
d 被告の内部は、平成20年までは、全国は16リージョンに区分し、そのリージョン内を更に幾つかの教区に分けていたが、その後は、地区、教区の順に地区割りがされている。教区は更に区域に分かれており、一つの区域は6~10名程度の信者で構成され、そして、区域を取りまとめる区域長、複数の区域をまとめる代表区域長がいる。日曜日の礼拝や訓読会などの集まりの後に、各区域の区域長や代表区域長が出席して行われる区域長会議や代表区域長会議では、区域長がまず区域の信者をまとめ、代表区域長に献金の実績を報告し、代表区域長がそれを女性責任者である婦人部長に報告するとともに、各区域長に対し献金の指示がなされていた。
e 文鮮明の子である文国進は、メシアである文鮮明の後継者と目されており、月1回来日して、献金を指示した。
(イ) 清平修練会について
a 被告において、霊界で先祖が苦しんでいるのを助け出すための先祖解怨という儀式を行うには、韓国にある天宙清平修練苑において行うしかなかった。
b 被告においては、信者に対し、天宙清平修練苑日本事務局作成の冊子を頒布し、清平修練会における先祖解怨式と先祖祝福式への参加を勧誘し、先祖解怨式を受けるためには先祖解怨献金を持参する必要があること、さらに、その後で、先祖祝福式を受ける必要があり、そのために先祖祝福献金も必要であることを伝えてい た。
c 清平修練会の主宰者的立場にあり、霊界の大母様の言葉を伝えるとされる金孝南は、たびたび来日して、被告の教会において、信者を集めて集会をしていた。
d Bは、区域の信者の先祖解怨の状況について把握するとともに、ゲストの先祖解怨の状況についても把握していた。
(ウ) 被告におけるBの活動
a Bは、代表区域長として、区域長会議又は代表区域長会議に参加した。
b Bは、被告の信者として、日曜日の礼拝に参加したほか、伝道活動として、街頭で通行人に声を掛けて、店舗やビデオセンターに連れて行って被告の教義を教え込み、信者にする活動も行っていた。
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イ
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①以上のような事情からすれば、被告においては、組織的活動として、これまで、信者の財産状態を把握した上で、特に壮婦の場合、献金によって夫を救い、夫の家系を救うことこそが信者としての使命であるとして、夫や他の家族の金を拠出するように指示をし、夫の財産を夫の意思に反して内緒で献金する等の名目で交付させていたということができる。
また、韓国の天宙清平修練苑は、被告の組織の一部であるとは認められないものの、上記ア(イ)で認定したとおり、清平修練会における献金について被告がいったん受け取ったか否かに関係なく、被告内部においては、教義の一環として、信者に対して、霊界で先祖が苦しんでいるのを助け出すための先祖解怨式を行う必要性を唱え、清平修練会への参加を勧誘し、それに伴う献金の必要性を伝えるなどその交付を指示していたということができる。
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ウ
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(中略)
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(2)
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被告は、Bが被告の指示に基づいて行った献金が、夫である原告の了承なく、原告の財産を原資としたものであることを知っていたこと
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ア
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掲記の証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア) 被告においては、人間は生まれながらに原罪を持っており、それを清算するためには、文鮮明が祝福する合同結婚式に出席する必要があるとされていた。そして、壮婦の場合は、夫を伝道して夫と共に合同結婚式に参加することが目標とされたが、夫が反対している場合には、夫の写真などを持って祝福式に参加させており、被告の幹部信者は、夫の写真を持って結婚式に参加した壮婦については、夫が信仰に反対していることを知ることができた。Bは、平成9年7月15日、原告の写真を持って合同結婚式に出席した。
(イ) Bは、平成21年頃、被告に提出する伝道リストアップにおいて、原告について「教会を反対」と記載した。
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イ
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前記⑴で認定した事実に加え、上記アのような事情からすれば、被告は、Bの家庭の財産状態を把握するとともに、夫である原告が、Bの活動に賛同しておらず、Bが夫を信者にすることを目標に活動していることを把握していたことが認められる。そうであれば、被告は、専業主婦であるBが行った献金の原資が、本人の金ではなく原告の財産であり、原告の意思に反して出捐されたことについて認識していたということができる。
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ウ
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なお、被告は、献金をするか否かは個々の信者の問題で、信者の家庭の事情も様々であるから、被告が信者全体に献金を呼びかけること は、不法行為を構成しない上、壮婦に信仰に対する夫の立場や、信者が行う献金の原資につて詮索することはしておらず、Bが所属する渋谷教会は膨大な信者の数がいることや、Bの1回の献金額は最高でも100万円であったことからしても、Bの献金の原資を知らないと主張する。
確かに、被告が信者全体に献金を呼びかけ、それに基づき信者が自己の意思で献金をすること自体は何ら問題なく、その献金の原資がたまたま第三者から不法に取得されたものであったとしても、そのことから直ちに第三者との関係で被告に不法行為が成立することにはならない。しかしながら、被告においては、壮婦について、個々の信者の家庭の財産状態や夫の信仰に対する反対の有無を把握し、被告の教義に基づいて、夫やその家系を救うために、夫の財産などを意思に反してでも献金することが指示されていることからすれば、被告としては、専業主婦であるBの行った献金の原資が、夫の財産であり、夫の意思に反して引き出されたことを知っていたということができるから、被告の主張は採用することができない。
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(3)
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以上によれば、被告においては、組織的活動として、信者の財産状態を把握した上で、壮婦に対しては、献金によって夫を救い、夫の家系を救うという使命のために、夫の財産を夫の意思に反して内緒で献金する等の名目で交付させており、これを受けて専業主婦であるBが行った献金等について、その原資が原告の財産であり、原告の意思に反して出捐されたことを認識していたと認められるから、上記出捐について、組織的な不法行為として原告に対する損害賠償責任を負うというべきである。
なお、被告は、天宙清平修練苑のある韓国の清心教会は被告とは全く関係がなく、清平修練会への参加は個人の自由な判断に委ねられている上、Bが送金していた当時、先祖解怨献金は、被告を介さず、清平修練会において直接納めるもので、被告が信者に献金を勧誘、強要することはないから、Bの清平修練会における献金について、不法行為責任を負わないと主張する。
しかしながら、清心教会が被告とは全く別法人であって、組織の運営、管理、人事等において関係がなく、先祖解怨献金について、被告を介さず、清平修練会において直接納めるものであったとしても、上記のとおり、被告は、専業主婦であるBが行った献金の原資が、夫の財産であり、夫の意思に反して引き出されたことを知っていた上、信者に対し、教義の内容として霊界で先祖が苦しんでいるのを助け出すために先祖解怨式を行う必要性を唱え、清平修練会への参加を勧誘し、これに参加するためには先祖解怨献金等が必要であると指示していたことからすれば、Bの清平修練会における支出についても、被告は、原告に対する関係で不法行為責任を負うというべきである。
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(4)
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損害について
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ア
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経済的損害
前記1⑴に記載のとおり、原告名義の口座等から支出された使途不明金又は献金は6198万6623円であるが、このうち、(中略)3118万6623円については、被告の上記組織的な不法行為により支出されたものと認めるのが相当である。
したがって、上記金額について、被告の不法行為と相当因果関係がある損害と認めることができる。
被告は、いつ、誰がどのような方法で、Bに献金等の勧誘を指示し、幾ら献金させたのかを個別具体的に特定した上での主張、立証がされていないと主張する。しかしながら、原告名義の口座から引き出した金銭のうち、生活費や教育費などに使ったものなどを控除しても、なお多額の金銭が使途不明であることからすれば、個別具体的な立証をしなくても、他の使途に使った金額を除いた残りは被告への献金等に使用したと推認することが不合理とはいえず、被告の主張は採用することができない。
また、被告は、原告名義の口座は、婚姻中に形成された夫婦共同財産で、専業主婦であったBにも潜在的には半分の持分があり、原告の社会的地位・収入に照らせば、Bが行った献金は、原告の権利を不当に侵害していないこと、また、原告が本件で請求しているBの支出金額については、Bの潜在的持分を婚姻中に処分したものとして、離婚調停において清算済みであるにもかかわらず、二重取りになり不当であると主張する。しかしながら、被告が主張する潜在的持分は観念的なものであって、それが顕在化するのは離婚時であるところ、証拠に(甲B8~10の各証)によれば、離婚の時点における原告名義の各口座には、Bによる引出行為の結果、Bによる引出額に比してわずかな金額しか残っていないものと解されることからすれば、被告の主張は、いずれも前提を欠き、採用することができない。
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イ
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慰謝料について
原告は、被告による指示の結果、無断で預金を取り崩され、妻への愛情や信頼が覆され、離婚に至らざるを得なくなったこと、老後の蓄えとするはずの預金がほとんど奪われたことにより、精神的苦痛を受けたと主張する。
しかしながら、無断で預金を取り崩されたことにより、妻への愛情や信頼が覆され、離婚を余儀なくされたという精神的苦痛については、証拠によれば、原告は、Bによる引出行為が発覚した平成21年9月頃の時点ではまだ離婚の意思はなく、最終的にBと離婚するに至ったのは、平成22年10月頃に長女が合同結婚式に行くことを知り、夫婦間で話し合ったものの結論が出なかったためであると認められることからすれば、被告の不法行為との因果関係が認められない。また、老後の蓄えとなる預金が殆ど奪われたという経済的損害を受けたことによる精神的苦痛について、経済的損害それ自体と別個に金銭的な評価をしなければならない事情も認められない。
よって、精神的苦痛に対する慰謝料は認められない。
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ウ
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弁論の全趣旨によれば、原告は、上記損害を回復するために、訴訟代理人に委任して本件訴訟を提起せざるを得なくなったことが認められ、事案の性質等から、弁護士費用310万円の限度で、被告の不法行為と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。
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エ
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したがって、上記ア~ウによれば、本件における原告の損害額の合計は、3428万6623円となる。
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3
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他の法律構成について
原告は、前記2で検討した以外にも、Bに献金を実行させた幹部信者を被用者とする使用者責任に基づく損害賠償請求権、B自身を被用者とする使用者責任に基づく損害賠償請求権、不当利得返還請求権についても主張するが、仮にこれらの法律構成について不法行為又は不当利得の成立が認められたとしても、前記2⑷で認定した額を超えて、別個の損害が認められるわけではないことからすれば、これらの点についての判断は要しない。
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第4 結論
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以上によれば、原告の請求は、3428万6623円及びこれに対する最終の不法行為の日である平成21年8月26日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を認める限度で理由があるが、その余は理由がない。
よって。主文のとおり判決する。
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東京地方裁判所民事第24部
裁判長裁判官 阪 本 勝
裁判官 武 部 知 子
裁判官 大曾根 史 洋
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