◆申入書

株式会社 北國新聞社へ

2017(平成29)年2月16日

石川県金沢市南町 2−1
株式会社北國新聞社
代表取締役 飛田 秀一 殿
    全国霊感商法対策弁護士連絡会
             代表世話人 弁護士 平 岩  敬 一(横浜)
             代表世話人  同  郷 路  征 記(札幌)
             代表世話人  同  中 村  周 而(新潟)
             代表世話人  同  河 田  英 正(岡山)

             東京都新宿区新宿1−15−9 さわだビル5F
              東京共同法律事務所
               Tel:03-3341-3133 Fax:03-3355-0445
  (連絡担当)事務局長   弁護士 山 口  広
前略 突然このようなお手紙を出す失礼をお赦し下さい。
当連絡会は,世界平和統一家庭連合(旧称世界基督教統一神霊協会,以下「統一教会」といいます)による霊感商法被害の救済と根絶のために,1987年5月,全国の弁護士約300名により結成された弁護士の連絡会です。
昨年12月24日付の北國新聞朝刊に「地域貢献に励んだ家族ら5組を表彰 野々市市で世界平和統一家庭連合」というタイトルで報道された事態を当連絡会は深刻に受け止めております。このような報道は,統一教会の広報活動に加担していると言わざるを得ないことから,本申入を行います。貴社におかれては是非この申入書についてご検討の上ご回答ください。

1 統一教会について
統一教会が,一般市民に対し,印鑑,念珠(数珠),石板,壺,多宝塔,釈迦塔,人参濃縮液などを先祖の因縁を解放するためなどと欺罔し,畏怖・困惑させて,不当に高い価格で売り付けたり,多額の貸付・献金を強要したりする,いわゆる霊感商法は,当連絡会が集計した被害者の相談だけでも,1987(昭和62)年から2015(平成27)年12月までの28年間に合計約3万3789件,被害合計は約1177億円にのぼっており,現在もなお同様の被害相談が継続して寄せられています(資料1)。

  また統一教会は,「真(まこと)のメシヤ」であるとされる故文鮮明(2012(平成24)年9月3日死去)の指示により,「万物復帰」という教義の実践として,日本人信者に対し,強引な資金集めとそれによる献金を,毎月目標額を示して,その達成のための活動を継続させてきました。こうしたいわゆる霊感商法については強い社会的批判があり,再三にわたって献金や物品販売活動,ひいてはその信者勧誘活動についてまで,裁判所において統一教会の法的責任が認められてきたにもかかわらず,統一教会は,今でも霊感商法の手口による人参濃縮液などの物品販売活動や強引な献金強要を止めようとしません。全ての日本人信者が再臨のメシヤとあおいできた故文鮮明の死去後も,その後継者幹部らが,日本の組織に「いつまでにいくらを献金しろ」という過大な指示を出し続けているため,違法な手口による資金集めの活動を止めることができないのです。

念のため統一教会の法的責任が認められた判決が多数ありますので,その一覧を同封致します(資料2)。必要であれば,これらの判決文をお送りしますのでご連絡下さい。これらをご覧になれば判るように,統一教会の伝道や資金獲得活動で用いられる手口が違法であることは,すでに確立された判例となっています。また,こうした統一教会信者の行う違法な行為について,長期間にわたって,各地で刑事上の捜査,摘発がなされ,有罪判決が下されています。近年は特に霊感商法の手口について,特定商取引法違反や薬事法違反などで信者が相次いで摘発されています。その一覧も同封致します(資料3)。

こうした統一教会の手口はマスコミの報道,裁判所の判決等により広く知られるようになり,統一教会にとって従来の手口の霊感商法による資金集めは困難になってきました。そこで統一教会は,その正体を隠して資産を有する高齢者,未亡人,主婦等に近づきビデオセンターに通わせて,時間をかけて説得して献金を強要する外,その所有する不動産を担保に借金をさせて統一教会組織に提供させたり,銀行,サラ金などから借金をさせたりするなどしております。また,これらの正体を隠した違法不当な活動を効果的に展開し続けるために,2015(平成27)年9月にその名称を世界平和統一家庭連合(略称「家庭連合」)に変更しました。ただこの名称変更の認証にあたって文化庁は1年間は「旧統一教会」と明示して正体隠しの勧誘による被害発生抑止を指示しています。

2 北國新聞の報道について
2016年12月24日朝刊では,統一教会主催の行事を無批判に唱揚して取り上げ,あたかも宗教団体ではない慈善団体が,県議会議員の賛同も得て,貴社が後援してイベントを行ったかの如き報道をしました。
 以下全文を記載します。

 「世界平和統一家庭連合の集い『世界が家族になっていく』(本社後援)は23日,野々市市文化会館フォルテで約700人が出席して開かれ,地域貢献に励んだ家族ら5組が表彰された。
   同会の阿部美樹家庭教育局長による講演や太鼓の演舞,合唱,演劇などのステージ発表が行われた。会場では日本赤十字社に贈る善意も募った。中村勲県議が祝辞を述べた。」
   公共の媒体として北陸地方に大きなシェアを有する貴紙において,このように破壊的カルトである特定宗教団体の活動を自ら後援し,しかも一般市民の目に,前記の如く誤解させる文面で報じられることは,重大な問題であります。
   北國新聞は,2012年12月3日にも,統一教会の活動を資料4のとおりに報じており,貴社の統一教会とのかかわりや編集方針に,重大な疑惑を持たざるをえません。
 今回の記事は,統一協会の行事をあたかも特定の宗教ではない慈善団体の活動のように取り上げること,しかもそれを貴紙が後援することで,読者がそれと認識できぬまま統一教会の活動に触れ,かつ,統一教会に親近感を持たせます。また,統一教会による信者向けの重要な宣伝材料を提供することにもなりました。
  このような問題のある宗教団体の組織活動を無批判に後援し,それを報道することによって,新たな被害者が生み出されることは避けられない事態となっています。

3 申し入れ
  当連絡会としましては,今回の北國新聞の記事が一般市民に対し,それと認識できぬまま統一教会の活動に親近感を持たせたことが,今後,一般市民が統一教会に参加し,資産を奪われ人生を狂わされる端緒となることを,深刻に憂慮しています。
また,統一教会による信者向けの宣伝材料を提供している事態が生じていることにより,あたかも北國新聞社が統一教会の活動に賛同していると思わせ,また,それが統一教会により悪用される事態が生じていることも憂慮しています。
  そこで,以下の質問事項について,北國新聞社において検討の上,当連絡会に対し,文書で回答するように申し入れます。

@ 2016年12月23、24日の家庭連合のイベントを後援し,しかも本紙に記事を掲載したいきさつ及び担当部、担当者名をお知らせください。

A 北國新聞においては,一般の読者が特定の宗教法人の行事だと気付かずに参加しかねない世界平和統一家庭連合こと統一教会の活動や行事を,今後も後援し,記事に取り上げる意向がありますか。

  回答は,本年2月28日までに,当連絡会担当事務局長弁護士山口広宛,文書により送付していただきますようお願いします。なお,この件についての問合せやご意見は,弁護士山口広または事務局宛てにご連絡ください。

草々

添 付 資 料

1.当連絡会作成の被害集計表
2.統一協会の責任を認めた判決の概要
3.統一協会信者に対する刑事手続事例
4.北國新聞からの記事2点
以上