注:本資料は、平成 2 9 年(ワ)第 1 2 0 4 8 号 損害賠賞請求事件「判決」に 一部、個人情報等のマスキングを施したものです。

◆損害賠償請求事件 東京地裁判決(令和2年2月28日)


令和 2 年 2 月 2 8 日 判決 言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成 2 9 年(ワ)第 1 2 0 4 8 号 損害賠賞請求事件
口頭弁論終結日 令和元年 1 1 月 2 2日

   判      決
当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり
   主      文
被告家庭連合,被告松藤及び被告河内は,原告に対し,連帯して,
4 7 6 万 0 5 0 0 円及びこれに対する平成 2 7 年 1 2 月 3 1 日から
支払済みまで年 5 分の割合による金員(ただし第 2 項の限度で被告片
桐とそれぞれ連帯して)を支払え。
被告片桐は,原告に対し,被告家庭連合,被告松藤及び被告河内と
連帯して,4 4 万円及びこれに対する平成 27 年 12 月 31 日から支
払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え。
原告の被告朴に対する請求並びに被告家庭連合,被告片桐,被告松
藤及び被告河内に対するその余の請求をいずれも棄却する。  
訴訟費用は,原告に生じた費用の 50 分の 9 と被告家庭連合に生じ
た費用の 10 分の 9 を被告家庭連合の負担とし,原告に生じた費用の
1 2 5 分の 2 と被曺片桐に生じた費用の 25 分の 2 を被告片桐の負
担とし,原告に生じた費用の 50 分の 9 と被告松藤に生じた費用の 1
0 分の 9 を被告松藤の負担とし,原告に生じた費用の 50 分の 9 と被
告河内に生じた費用の 10 分の 9 を被告河内の負担とし,被告朴に生
じた費用並びに原告,被告家庭連合,被告片桐,被告松藤及び被告河
内に生じたその余の費用を原告の負担とする。  
この判決の第 1 項及び第 2 項は,仮に執行することができる。

事実及び理由  

第1 請求     
  被告らは,原告に対し,連帯して, 523 万 8290 円及びこれに対する平
成 27 年 12 月 31 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え。  

第 2 事案の概要     
  本件は,原告が,被告家庭連合の信者である被告朴,被告片桐,被告松藤及
び被告河内(以下,上記 4 名を併せて「被告朴ら」という。)から違法な勧誘を
受け,多額の献金等をさせられたと主張して,被告らに対しては共同不法行為
(民法 709 条及び 719 条 1 項)に基づき,被告家庭連合に対しては予備的
に使用者責任(民法 71 5 条 1 項)に基づき,損害金等 523 万 8290 円及
びこれに対する不法行為後の日である平成 27 年 12 月 31 日から支払済みま
で民法所定の年 5 分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。
これに対し,被告らは,本案前の答弁として,本件訴訟提起前に原告と被告
河内とは和解をしたところ,上記和解の効力は被告ら全員に及ぶと主張して
訴えの却下を求めるとともに,そうでないとしても,被告朴らのした勧誘に違法
性はないと主張して,原告の請求を争っている。

前提事実(争いのない事実及び後掲証拠等から容易に認められる事実)
  (1)当事者     
  原告(昭和30年生まれの女性)は,昭和53年■■■■■■■にA
(昭和 2 5 年生まれの男性。以下「A」という。)と結婚し,昭和 5 5 年
■■■に長男B(以下「B」という。)をもうけたが,Aは平成 1 0 年
■■■■■■■に死亡し(享年 4 8 歳),Bは平成 2 3 年■■■■■■に死亡
した(享年 3 1 歳)。(争いのない事実,甲 7,31 )
    被告家庭連合は,大韓民国国籍の文鮮明を創始者かつ救世主(メシア)
とし,「原理講論」を経典とする宗教団体であり,日本では昭和 3 9 年に
設立登記がなされた宗教法人である。被告家庭連合は,「世界基督教統一
神霊協会」との名称であったが,平成 27 年 8 月に現在の名称に変更した。
(争いのない事実)
     ウ 被告朴らは,いずれも被告家庭連合の信者であり,本件当時,被告家庭
連合の教会である町田家庭教会に所属していた。(争いのない事実,弁論
の全趣旨)  
  (2)合意書の作成及び被告河内の支払
    原告と被告河内は,平成 27 年 12 月 29 日,次のとおりの内容で合意
書を作成した(以下,この合意書を「本件合意書」という。)。以下の条項
の「甲」は原告,「乙」は被告河内を指す。(乙イ 1 )
      (ア) 第 1 条
乙は,本件解決金として,甲に対し,203 万円の支払義務があるこ
とを認める。
      (イ) 第 2 条
乙は,甲に対し,上記解決金を,下記方法により,持参にて支払う。
          記
平成 27 年 12 月末日 203 万円(1 回)
 
      (ウ) 第 3 条
甲と乙との間には.本合意書に定めるほか,何らの債権債務のないこ
とを相互に確認する。また甲は,乙の関係団体並びに世界平和統一家庭
連合(旧世界基督教統一神霊協会)に対し,今後,名目の如何を問わず
何らの請求(甲の献金等の返還請求を含む)もしないことを約する。
加えて,甲が伝導した姉のC様に関しても同様とする。
(以下,この条項を「本件清算条項」という。)
 
    被告河内は,平成27年12月29日,原告に対し,現金で203万円
を交付し支払った。(争いのない事実)

 2 争点及びこれに関する当事者の主張
本件の争点は,本案前の争点として,本件合意書による和解の効力の有無(争
点 1) ,本案の争点として,被告らの共同不法行為の成否(争点 2),被告家庭
連合の責荏の有無(争点 3)並びに損害の有無及びその額(争点4)である。
  (1) 本件合意書による和解の効力の有無(争点 1)
  (被告朴らの主張)
    原告と被告河内は,本件合意書の本件清算条項において何らの債権債務
のないことを相互に確認したから,原告の被告河内に対する訴えは訴えの
利益を欠き,不適法として却下されるべきである。
また,被告朴,被告片桐及び被告松藤については,本件消算条項にいう
被告河内「の関係団体並びに世界平和統一家庭連合(旧世界基督教統一神
霊協会)」に含まれるから,原告の被告朴,被告片桐及び被告松藤に対す
る訴えも訴えの利益を欠き,不適法として却下されるべきである。なお,
仮に本件合意書による合意が被告朴,被告片桐及び被告松藤との関係で第
三者のためにする契約であると解される場合に備え,上記被告らは,令和
元年 11 月 22 日付け最終準備書面をもって,原告に対し,本件合意書に
よる和解の利益を享受する意思を表示した。
    原告と被告河内が本件合意書を取り交わすに至った経緯は,次のとおり
である。
      (ア) 被告家庭連合には,文鮮明の“み言集”である「天聖経」,「平和経」,
「真の父母経」の 3 つの経典があるところ,被告家庭連合の信者である
向原文子(以下「向原」という。)は,平成25年10月頃,原告に対
し 280 万円の献金によりこれらを授かることができると伝えた。原
告は,一旦は献金を拒否したが,その後,半分であれば献金できると述
べ,140 万円を献金し,天聖経と平和経を授かった。
また,被告家庭連合は,アメリカ合衆国に研修施設(通称「ピースパ
レス」)を建設していたところ,被告河内は,平成26年11月頃,原告
に対し,この建設に関する献金として140万円を納めるかどうか聞い
た。原告が難しいと答えたため,被告河内は,まず 6 0 万円を献金し,
その後こつこつと献金することを勧めたところ,原告はそれならできる
と答え,63 万円( 60 万円と,こつこつと献金する分の 3 万円)を献
金した。
 
      (イ) 原告は,平成2年11月頃》被告河内に対し,上記 63 万円の献金
の返金を求めた。また,原告は,被告河内と話をするうちに,上記140
万円の献金の返金をも求めようになった。すなわち,原告は,祝福
は受け入れ,Bの祝福もやりたいが,経典はもう読んでしまって必要な
いからと述べ,上記合計203万円の返金を求めた。被告河内は,原告
に対し,「熱心に学んで,祝福家庭となって,自分の意思で献金したの
だからよく考えた方がいい。」などと述べたが,原告の意思が変わらな
かったため,原告に対し203万円を返金することとした。その際,被
告河内は,原告に対し,その他の献金について返金を求める意思がない
ことを何度も確認した。
 
      (ウ) 被告河内は,上記(イ)の経緯を受けて本件合意書の文面を作成した。
被告河内は,本件合意書の文面を2通用意し平成27年12月29
日,原告と会い,被告河内が本件合意書の文面を読み上げ,原告はもう、
1 通の本件合意書の文面を目で追いながらその内容を確認した。その上
で,原告と被告河内は,本件合意書 2 通にそれぞれ署名押印した。その
後,被告河内は,原告に対し,現金203万円を手渡し,原告はその場
で枚数を確認して受領した。
なお,原告は,帰り際,被告河内に対し,「 教会には来ませんが,Bの
祝福式には清平に行きますのでよろしくお願いします。」などと述べて
いた。
 
    原告は,原告が被告河内に対し畏怖誤信の状態にあったから,本件合意
書による和解の範囲に203万円の返金以外の事項が含まれないとか,本
件合意書による和解が錯誤や公序良俗違反により無効になるなどと主張す
る。しかし,原告は,203万円の返金を求める際,被告河内に対し,一括
返済を強く求めて譲らないなど,自らの意思を主張しており,原告は畏怖
誤信の状態になかった。また,原告は,Bの祝福式をするつもりだったよ
うに,203万円の献金以外の献金の返還は希望していないから,本件清
算条項は原告の意思に沿うものである。  
     エ 原告は,本件清算条項が消費者契約法 8 条 1 項 3 号に反し無効であると
主張する。しかし,本件合意書の契約当事者は原告及び被告河内であって,
本件合意書による和解は消費者契約(消費者契約法 2 条、3 項)に該当しな
い。仮に消費者契約に該当するとしても,被告河内は原告に 2 0 3 万円を
返金しており,本件合意書による和解は被告家庭連合の損害賠償責任の全
部を免除するものではないから,消費者契約法 8 条 1 項 3 号に該当しない。
(被告家庭連合の主張)
原告と被告河内は,本件合意書の本件清算条項において,被告家庭連合に
対しても何らの債権債務のないことを確認したところ,これは,被告家庭連
合との関係で第三者のためにする契約である。そして,被告家庭連合は,平
成 28 年 7 月 22 日,原告に対し,本件合意書による和解の利益を享受する
意思を表示した。したがって,原告の被告家庭連合に対する訴えは訴えの利
益を欠き,不適法として却下されるべきである。そうでないとしても,原告
の被告家庭連合に対する請求は理由がないから,棄却されるべきである。
      (被告家庭連合の主張)
      原告と被告河内は,本件合意書の本件清算条項において,被告家庭連合に
対しても何らの債権債務のないことを確認したところ,これは,被告家庭連
合との関係で第三者のためにする契約である。そして,被告家庭連合は,平
成 28 年 7 月 22 日,原告に対し,本件合意書による和解の利益を享受する
意思を表示した。したがって,原告の被告家庭連合に対する訴えは訴えの利
益を欠き,不適法として却下されるべきである。そうでないとしても,原告
の被告家庭連合に対する請求は理由がないから,棄却されるべきである。
     (原告の主張)
    原告と被告河内が本件合意書を取り交すに至った経緯は,次のとおり
である
      (ア) 原告は,後記(2) (原告の主張)で主張するとおり,被告らの指示に従
わなければ自分やA,Bが地獄で苦しむことになると畏怖誤信した状
態であったところ,さらに,被告松藤や被告河内から,事あるごとに「霊
界にいるBくんの声を聞きたいでしよう。会いたいでしよう。天聖経を
授かって毎日訓読すれば, Bくんが身近に感じられますよ。」などと告
げられていた。そのため,原告は,言われた,とおりにすることがBのた
めであり,そうしなければBが地獄に行くことになると畏怖誤信し,平
成 25 年 10 月,み言集 2 冊を 140 万円で購入した。その後,原告は
天聖経を 1 年かけて訓読したが,難解な話が延々と続くばかりで,被告
松藤や被告河内から聞いていた内容と違うと感じた。
原告は,平成26年11月頃,被告松藤や被告河内から,3 冊目のみ
言集を購入するように言われた。原告はこれを拒否したが,被告松藤や
被告河内は,約 4 時間もの長時間にわたって,原告に対し,天聖経を授
かれば地獄にいる夫や長男も救われる,お金を持って霊界に行けば原告
も地獄へ落ちるなどと告げた。そのため,原告はその旨畏怖誤信し、み
言集の代金 140 万円のうち 63 万円を支払った。
 
      (イ) しかし,原告は,み言集が事前に聞いていた内容と異なり,原告にと
って不必要なものだったことや,3 冊目のみ言集購入に際しての被告松
藤や被告河内の対応に不満があったことから,平成 2 6 年 1 1 月頃には,
被告河内に対し、上記合計 2 0 3 万円の返金を求めていた。
 
      (ウ) 平成 2 7 年 1 2 月頃に至り,原告は,被告河内から 2 0 3 万円の返金
を受けることとなった。
被告河内は,平成 2 7 年 1 2 月 2 9 日,原告に対し,被告河内が用意
した書面(本件合意書)に署名押印するように求めた。原告は,上記書
面について何らの説明も受けず,記載内容をよく確認できないまま,上
記書面に署名押印した。
 
    主位的主張(203万円の返金以外の事項は和解の範囲外であること)
原告は,被告河内に対し,み言集の代金合計203万円の返金を求めた
のであって,原告と被告河内の間では上記返金に関する話しかしていな
い。原告は,この時点でも,Bのために祝福式を挙げなければならないと
畏怖誤信した状態が続いており,祝福献金の返金を求めることなどできな
かった。また,原告は,本件合意書の記載内容を確認,検討することもで
きなかった。したがって,上記合計 203 万円以外に原告がした献金の返
金に関しては,本件合意書による和解の範囲外である。
 
    予備的主張
      (ア) 本件合意書による和解の錯誤無効
原告は,被告河内に対し,無条件で 203 万円を返金するよう求めて
いたが,本件合意書には本件清算条項があの原告が被告らに対する 2
03 万円以外の献金に関する請求権を失うものであった。すなわち,本
件合意書による和解は無条件で 203 万円を返金するものではなく,原
告にはこの点について錯誤があった。したがって,本件合意書による和
解は,錯誤により無効である(民法 9 5 条)。
 
      (イ) 本件合意書による和解の公序良俗違反による無効
原告は,平成 27 年 12 月当時も,被告らに従わなければAやBが
地獄に落ちるなどと畏怖誤信した状態であり,被告河内の指示に反する
ことができず,本件合意書の内容をよく確認できないまま署名押印した。
これは,被告らが,原告を上記畏怖誤信の状態にして多額の金銭を支払
わせておきながら,その状態を利用して本件合意書に署名押印させるこ
とにより,支払わせた金銭の返還を免れようとするものであって,社会
的相当性を逸脱するものである。したがって,本件合意書による和解は,
公序良俗に反し無効である(民法 9 0 条)。
 
       (ウ) 本件清算条項の消費者契約法 8 条 1 項 3 号違反による無効
本件合意書は原告及び被告河内の間で取り交わされたものであるが,
その内容は原告と被告家庭連合との間の法律関係について定めたもので
ある。したがって,本件合意書による和解は消費者契約(消費者契約法
2 条 3 項)に該当する。そうすると,本件清算条項は,被告家庭連合の
原告に対する不法行為に基づく損害賠償債務を免除するのと同一の効力
を発生させようとするものであるといえるところ,これは事業者の責任
の全部免除規定であって,同法 8 条 1 項 3 号に該当し,無効である。
 
    仮に,本件合意書による和解が有効としても,本件消算条項の対象に被
告朴,被告片桐及び被告松藤は含まれないから,上記被告らには本件清算
条項の効力は及ばない。

  (2) 被告朴らの共同不法行為の成否(争点 2 )  
 (原告の主張)
    事実関係  
       (ア) 原告は,平成 16 年頃,被告朴と知り合い,被告朴から韓国語を習っ
ていた。原告は,ある時,被告朴が被告家庭連合の信者であることを知
ったが,その際,被告朴に対し,被告家庭連合の話や勧誘をしないよう
に求め,被告朴もこれを了承していた。
被告朴は,平成 20 年よりも前から,原告の父母やAの遺影を見て,
原告に対し,「3 人ともいい顔していないね。」などと述べたり,度々,
子孫に何か悪いことが起こるのは先祖の因縁であるなどといった先祖の
因縁の話をしたりして,原告に家系や先祖の因縁に対する不安を抱かせ
た。
 
      (イ) 平成 23 年 4 月,Bががんに罹患していることが発覚した。
被告朴は,原告に対し,Aが若くして死亡したことやBががんに侵
されたのは先祖の因縁が原因であり,家系図を作った方がよいと勧めた。
原告は,これまで被告朴から先祖の因縁の話を聞いていたことに加え,
上記のように勧められたことから,Bを救うためには先祖の因縁のこと
を学ぶしかないと畏怖誤信した。
被告朴は,その頃,原告に対し家系や家系図のことを教えてくれる,
人だとして,被告片桐を紹介した。なお,原告は,被告片桐が被告家庭
連合の信者であるとの説明は受けていない。
そして,原告は,被告片桐のもとで先祖の因縁や地獄に関するビデオ
を見せられた先祖供養の話を聞かされたりしたが,その内容は,死
後,大半の人間は地獄に行くとか,地獄にいる先祖が苦しみから逃れよ
うとしてその苦しみを子孫に訴え,子孫の苦痛となって表れるとか,先
祖を幸せにしてあげなければ子孫の幸せはあり得ないとかいうものだっ
た。
原告は,被告片桐に対し会費( 1 か月当たり 5000 円)として合
計 3 万 5000 円を支払った。
 
      (ウ) 平成 23 年 9 月,Bが亡くなった。
被告朴は,原告に対し,「息子さんが亡くなったのは,ご先祖の因縁
のせいです。息子さんが,先祖の因縁により,霊界で苦しがっています。」
などと述べた。これにより,原告は,Bの死の原因が先祖の因縁のせい
であると誤信した上,Bが霊界で成仏できないことへの恐怖心をあおら
れた。
 
      (エ) 原告は,平成 2 5 年 3 月頃,被告朴に勧められるまま,斎藤■■(以
下「斎藤」という。)の占いを受けた。その後,原告は,日を改めて斎藤
の占いを受け,代金 5000 円を支払った。なお,斎藤は被告家庭連合
の信者であるが,原告はそのことを知らなかった。
原告は,斎藤から,原告の運勢が低下している時期とBが病気になり
死亡した時期とが関係しているかのような話をされ,ショックを受け,
どうして自分の周りから大切な人がいなくなるのか,どうすればこのよ
うな苦しみを味わわないようになるのかなどと聞いた。斎藤は,原告に
対し原告がこれからどのように生きるかが重要であると言い,町田家
庭教会に行き,家系図を完成せるとともに,家系や先祖のことを勉強
することを勧めた。原告は,Bの病気をきっかけに家系図を作成してい
たことや,これまでにも先祖の因縁の話を聞いていたことから,斎藤の
勧めを拒否できず,町田家庭教会に行くことにした。
 
      (オ) 原告は,平成 25 年 4 月,町田家庭教会の入会金として 3 万 5000
円を支払った。また,原告は,町田家庭教会への会費(1か月当たり 5
000 円)として合計 21 万円を支払った。
 
      (カ) 原告は,平成 25 年 4 月以降,週 1~2 回の頻度で町田家庭教会に通
い,先祖の因禄に関するビデオを見たり,被告松藤や被告河内の話を聞
いたりした。また,原告は,被告家庭連合の信者から,繰り返し,原告が
先祖供養の中心人物であるとか,地獄で苦しんでいる先祖が原告に助け
を求めているとか言われ,先祖の因縁に対する恐怖心を強めた。
 
      (キ) 被告家庭連合では,信者に対し,死後,地獄へ落ちないための唯一の
方法は,祝福に参加し血統転換を図ることであると教えている。
原告は,平成 25 年 5 月,被告片桐から,AやBがこれ以上地獄で
苦しまないようにするためには,先祖供養をして霊肉祝福を受けなけれ
ばならないと告げられた。これにより,原告は,地獄で苦しむAやB
を何とか救い出したいとの思いで,その頃,先祖供養代として 40 万円,
Aとの霊肉祝福の費用として 2 8 0 万円,Bや,原告の亡き兄の霊界
での結婚式の費用として 2 4 万円を.それぞれ支払った。そして,原告
は,平成 25 年 9 月,町田家庭教会において,霊肉祝福を受けた。
 
      (ク) 原告は,韓国の清平で行われる修錬会に参加しなければ悪霊を分立(排
除)することができ先祖が霊界で悪霊に苦しめられるとともに,自
身も不幸に苦しむことになると教えられ,その旨畏怖誤信した。そして,
原告は,被告松藤から修錬会に参加するように言われ,平成 25 年 11
月,平成 26 年 2 月,同年 7 月,同年 9 月の計 4 回,清平に渡航し,修錬
会に参加した。また,同年 9 月に清平に渡航した際には,霊肉祝福を受
けた
 
      (ケ) 平成 2 5 年頃,原告の実兄が脳出血を発症した。
被告松藤は,原告に対し,兄が脳出血となったのは地獄で苦しむ先祖
の訴えであるなどと告げた原告はその旨畏怖誤信し,その頃,祈
願書を書き,祈願料として合計 4 万円を支払った。
 
      (コ) 原告は,平成 25 年 10 月,み言集 2 冊を購入し,平成 26 年 11 月
には更にもう 1 冊購入し,それぞれ代金を支払った。この経緯は前記(1)
(原告の主張)ア(ア)のとおりである。
 
      (サ) 以上の他,原告は,被告松藤や被告家庭連合の信者から,AやBの
ために勉強する必要があると告げられて畏怖誤信し,原理講論(345
0 円)や聖書(3132 円) ,絵画 2 枚(各 4 万円)を購入した。

    被告朴らの行為の違法性
前記アのとおり,被告朴らは,Aの死,Bの病気やその死についての
原告の思いや不安を利用し,原告に対し,先祖や地獄への恐心,不安感
を植え付け,それらをいたずらにあおりながら,原告を畏怖誤信させ,多
額の金銭を支払わせたのであって,その手段は悪質というべきである。ま
た,これにより,原告は,原告の資力を超える大金を支出させられており
その結果は重大である。そして,このような手段の悪質性や結果の重大性
に鑑みれば,被告朴らの目的は原告から金銭を収奪するためであったとい
え,不当というベきである。
以上より,被告朴らの一連の行為は,社会通念上相当と認められる範囲
を著しく逸脱するものであって,違法というべきである。
     ウ 被告朴らの共同不法行為
被告朴らは,被告家庭連合の教えや信仰に基づき,被告家庭連合の組織
的な資金獲得活動として,相互に役割分担や連携をしながら原告に対する
一連の不法行為をしたものといえるから,被告朴らは,共同不法行為責任
を負う。
   (被告朴らの主張)  
    原告の主張は否認ないし争う。事実関係は後記イで主張するとおりであ
り,被告朴らは,原告に対し,恐怖心を植え付けたり不安をあおったりす
るようなことを告げていない。原告が被告家庭連合に献金を納めたのは,
AやBのために何かしてあげたいとの気持ちから,原告自ら被告家庭連
合の祝福を受けようと思ったためである。
したがって,被告朴らは,原告に対し共同不法行為責任を負わない。  
    事実関係
      (ア) 前記(原告の主張)ア(ア)について
原告と被告朴が知り合ったのは,平成 2 0 年のことである。原告と被
告朴は,被告朴が原告に韓国語を教える中で仲良くなり,交友を深めて
いた。
 
      (イ) 同(イ)について
被告朴は,平成 23 年 4 月頃,原告がAの死やBの病気のことで悩
んでいたことから,家系図の作成を勧めたところ,原告が興味を持った
ため,被告片桐を紹介した。その際,被告朴は,被告片桐が被告家庭連
合の信者であることを伝えている。
被告片桐は,原告からBが病気になったことの相談を受けたため,原
告に対し,ここで病気を治すことはできないので,先祖やAヘの思い
を心の支えにして幸せを意識していこうといった話をした。この話を聞
いた原告は喜んで,被告片桐のもとで家系図を作成することとし,家系
についての解説ビデオを見るようになった。
被告片桐は,自身のもとに学びに来る者に対し,茶菓子代を賄うため,
封筒を用意し,いくらでも気持ちで人れておくよう伝えているところ,
原告が被告片桐にいくらか支払ったのであれば,これに任意に応じたも
のである。
 
      (ウ) 同(ウ)について
原告は,Bの死の前から被告朴や被告片桐のもとを訪れなくなってお
り,原告が被告朴と再会したのが平成 24 年 1 月頃,被告片桐と再会し
たのは同年 6 月のことである。被告片桐は,原告にまた勉強に来ないか
と聞いたが,原告はこれを断っている。
 
      (エ) 同(エ)について
被告片桐は,斎藤の講演する「運勢を高めるメイクアップ開運講座」
を開催し,被告朴は,気晴らしになればと原告を誘った。原告はこれに
参加し,斎藤の無料の占いを受けたところ,斎藤の占いを気に入り,別
日に斎藤の占いを受け,なぜ自分の周りから大切な人がいなくなるのか
知りたいなどと話した。斎藤は,原告に対し,原告がこれからどのよう
に生きるかが重要であると励まし,町田家庭教会で人生についての勉強
をすることを勧めた。なお,斎藤は原告を占いの弟子にすると言い原
告は斎藤から占いの指導を受けるようになった。
 
      (オ) 同(オ)について
原告は,平成 2 5 年 4 月,町田家庭教会の教育センター(通称「カリ
ス」。以下「カリス」という。)を訪れ,受講の申込みをした。その後,
原告は平成 26 年 2 月まで受講し,合計 7 万円を支払った。また,原告
は,町田家庭教会の教育部の受講に際し 11 万円を支払った。
 
      (カ) 同(カ)について
原告は,町田家庭教会のカリスに週二,三回の頻度で通い,熱心に受
講していた。原告が見たビデオは,霊界や先祖についての解説,人生の
生き方などについて説いた内容である。
 
      (キ) 同(キ)について
被告片桐は,原告に対し,先祖供養について説明したところ,原告は,
Bのために何がしたいとの気持ちから,先祖供養をすることにし,合計
4 0 万円の感謝献金をした。
また,向原は,原告に対し,祝福結婚式について次のとおり解説した。
すなわち,被告家庭連合では,文鮮明師夫妻を媒酌として神様を中心と
した結婚式を行い,神様を中心とした幸せな家庭を作っていくところ,
既婚の者でも夫婦で祝福式に参加することで,神様を中心とした家庭と
して新たに出発できるし,相手が亡くなっていても一緒に祝福結婚式を
することができる。また,独身で死んだ者も,希望すれば霊界で祝福を
受けられるところ,それには特別解怨という役事がある。
原告は,上記解説を受け,祝福結婚式によりAと永遠に一緒にいら
れること,Bも霊界で結婚できることに希望を持ち,これら受けたい
と希望して,自身の祝福結婚式のための感謝献金 280 万円,Bの解怨
献金 12 万円,原告の亡き実兄の解怨献金 12 万円をそれぞれ納めた。
 
      (ク) 同(ク)について
原告は,前記(キ)のとおり,祝福結婚式に希望を持ち,これに必要な式
典に参加するため,清平に渡航した。すなわち,平成 25 年 11 月はA,
B,原告の亡き実兄の特別解怨の儀式に参加するため,平成 26 年
2 月は基元節祝福結婚式に参加するため,同年 7 月は霊肉祝福式に参加
するため,同年 9 月が家庭出発のための修錬会に参加するためである。
 
      (ケ) 同(ケ)について
原告は,実兄が転落して全身を打ち,骨折したと言い,けがが治るよ
うに願って,自ら祈願書を数回書き,合計 4 万円の感謝献金を納めた。
 
      (コ) 同(コ)について
前記(1) (被告朴らの主張)イ(ア)のとおり。
 
      (サ) 同(サ)について
原理講論は,被告松藤が,町田家庭教会のカリスで教える統一原理の
勉強に参照するため,原告に購入を勧めたものである。聖書は原告が自
ら希望して購入した。絵画 2 枚も,原告が展示会で気に入った絵画を購
入したものである。

 
  (3) 被告家庭連合の責任の有無(争点 3 )
  (原告の主張)
    主位的主張(共同不法行為責任)
前記(2) (原告の主張)で主張したとおり第被告朴らは被告家庭連合の教
えや信仰に基づき,被告家庭連合の組織的な資金獲得活動をしていたのだ
から,被告家庭連合は,被告朴らと共同不法行為責任を負う。
    予備的主張(使用者責任)
前記(2) (原告の主張)で主張したとおり,被告朴らは被告家庭連合の教
えや信仰に基づき,被告家庭連合の組織的な資金獲得活動をしていた。し
たがって,被告家庭連合とその信者である被告朴らとは,実質的な指揮監
督関係にあり,被告朴らによる一連の不法行為は被告家庭連合の事業の執
行についてなされたものであるといえるから,被告家庭連合は使用者責任
を負う。
    (被告家庭連合の主張)  
      原告の主張は否認ないし争う。なお,前記(2) (原告の主張)に関する主張
については,前記(2) (被告朴らの主張)の主張を援用する。

  (4) 損害の有無及びその額(争点 4 )
  (原告の主張)

    財産的損害 4 2 6 万 2 0 8 2 円
原告は,被告らの不法行為により,次表の「金額」欄記載の各金額を支
出し,損害を被った。
     
番号 項目 金額
家系図の勉強に関する会 3 万 5 0 0 0 円
斎藤の占い代 5 0 0 0 円
町田家庭教会への入会金 3 万 5 0 0 0 円
町田家庭教会の会費 21 万円
先祖供養代 4 0 万円
霊肉祝福代 2 8 0 万円
親族の結婚式代 2 4 万円
清平への渡航費( 4 回分) 3 7 万円
霊肉祝福の衣装代( 2 人分) 3 万円
10  霊肉祝福の指輪代( 2 人分) 1 万 0 5 0 0 円
11 祈願料( 4 回分) 4 万円
12 原理講論代 3 4 5 0 円
13 聖書代 3 1 3 2 円
14 絵画代( 4 万円×2 枚) 8 万円
  合計 4 2 6 万 2 0 8 2 円

    精神的損害 5 0 万円
被告らは,組織的・計画的に,原告の不安や家族の不幸等を利用し,原
告を精神的に追い詰めて正常な判断力を減退させ,原告から多額の金銭を
奪い取ったのであって,原告が被告らの不法行為によって受けた精神的苦
痛を慰謝するには,5 0 万円を下らない。
     ウ 弁護士費用 47 万 6208 円
弁護士費用は,前記ア及びイの合評額( 476 万 2082 円)の約 1 割
とするのが相当である。
     エ 合計 523 万 8290 円
   (被告らの主張)  
      前記(原告の主張)アの表の番号5ないし 7 及び 11 につき,原告がそれ  
ぞれ献金として同表「金額」欄記載の金額を納めたことは認めるが,その余
は否認し争う。また,同表番号 3 及び 4 につき,原告が町田家庭教会での受
講に際して支払ったのは合計 18 方円である。

第 3 当裁判所の判断 

 1 本案前の答弁の判断について
被告らは本案前の答弁として,本件合意書による和解により,原告の被告ら
に対する本件訴えは訴えの利益を欠くと主張するところ,原告は,本件合意書
による和解や本件清算条項の効力を争っている(争点 1 )。この点について判
断するには,本件の事実関係を認定する必要があるから,後記 2 において本件
の事実関係を認定した後,争点 1 について判断することとする。
認定事実
前記第 2 の 1 の前提事実,証拠(甲 31,32,乙イ3ないし7,21,証人
C,証人向原■■〔以下「証人向原」という。〕,証人斎藤■■〔以下
「証人斎藤」という。〕,原告本人,被告朴本人,被告片桐本人,被告松藤本
人,被告河内本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。なお,
掲記の証拠(個々に証拠を掲記する場合を含む。)は後記認定に反する部分を
除くが,必要に応じ,その理由を示すこととする。

  (1) 被告家庭連合の教義
 被告家庭連合の教義や教え,その実践には,概略,次のようなものがある。
    創造原理
神は,被造世界を創造し,神の子女としての人間を創造した。人間が人
格を完成し,人格完成した男女が結婚して夫婦となり,子女を産んで父母
となり,子々孫々を生み増やして理想世界(地上天国)を実現することが
神の願いであった。地上で天国生活を送った人間が霊界に行けば,天上天
国で永世し,永遠に神の愛の対象となるはずであった。(乙ロ 2 )
    堕落論
人間始祖たるアダムと工バは,エバが天使長の誘惑に勝てずに不倫なる
霊的性関係を結んで霊的に堕落し,エバがアダムを誘惑して肉的性関係を
結んで肉的堕落をし,アダムは堕落した天使長たるサタンの主管圏に落ち
た。こうして,人間始祖は,成長途上において罪(原罪)を犯して随落し,
人格完成できずに堕落性(自己中心的性)が生じ,「真の父母」となれなか
った。また,堕落性を継承した子孫が生み増え,地上世界は戦争や犯罪が
後を絶たない地上地獄と化した。(甲 4 ,乙ロ 2 )
    復帰原理
神は堕落した人類を救うため,救世主(メシア)としてイエス・キリス
トを地上に送った。イエスの使命は,結婚して「真の父母」となり,人類の
原罪を清算し,地上天国を実現することであったが,その使命を全うする
前に殺害された。
イエスの死から約 2000 年後,再臨のメシア(イエスと同様の使命を
持った人間)として神が地上に送ったのが,文鮮明とその妻・韓鶴子であ
り,夫妻は人類の「真の父母」となった。(乙ロ 2)
    万物復帰
人間始祖の堕落によって,神の子としての位置を離れ,本来の価値を失
い,万物以下の立場になった人類が,信仰を尽くして万物を神に捧げてい
くことにより,本来の神の子としての愛と心情を取り戻し,神と人間と万
物の本来の関係が取り戻されていくようになる。被告家庭連合においては,
その実践として,献金を神に捧げる際に真心を尽くし,信仰を尽くし,愛
の限りを尽くし,その精誠の現れとしての万物を捧げていくことを教えて
いる。
    霊界
人間には肉身と霊人体があり,肉身が滅んだ死後,霊人体のみとなって
霊界で永遠に生き続ける。
霊界は,天国,中間霊界,地獄という 3 つの層に分かれている。
天国は,神様から祝福を受けて結婚した夫婦だけが入ることのできる場
所である。
地獄は暗く,寒く,悪臭の漂う世界である。先祖の大半は地獄にいるが
苦痛を減らすことも,自らのカでより高い層の霊界に上がることもできな
い。そこで,地獄にいる先祖は,子孫の力を借りて,苦痛を減らし,より高
い霊界に行こうと,子孫に苦しみを訴え,その訴えが子孫の苦しみ(病気
や事故)となって現れる。(甲 2 ,1 とイ 15 )  
    祝福結婚式(祝福)
祝福結婚式とは,未婚の男女が,文鮮明夫妻の媒酌のもと,神を中心と
した結婚式をすることをいう。人間が死後,地獄に落ちなくても済む唯一
の方法であり,祝福結婚式に参加することにより,原罪を清算し理想家
庭を築いていくことができる。
また,既婚の男女においても祝福結婚式に参加して新しい家庭出発をす
ることができ(既成祝福結婚),既婚夫婦の一方が死亡し霊界にいる場合
でも,地上界と霊界とで祝福結婚式に参加することができる(霊肉祝福)。
さらに,独身のまま死亡し霊界にいる場合や,既婚夫婦がともに死亡し霊
界にいる場合でも,霊界で祝福結婚式に参加することができる(未婚霊人
祝福,霊界祝福)。

  (2) 被告朴ら及びその他の被告家庭連合の信者について
    被告朴は,大韓民国で出生し被告家庭連合の国際合同結婚式において
日本人の夫と結婚した後,平成 4 年以降,日本で暮らしながら韓国語を教
える仕事をしている。また,被告朴は,町田家庭教会に所属して礼拝に通
っている
    被告片桐は,平成 2 3 年当時,東京都町田市中町所在のプレシャスとい
う名称のマンションの 1 室(以下「プレシャス」という。)において,家系
図やその作成について教えていた。なお,プレシャスは,被告家庭連合の
事務所として使用されていた場所である。その後,被告片桐は,遅くとも
平成 2 7 年頃には,町田家庭教会のスタッフ(カウンセラー)となった。
    市川■■■(以下「市川」という。)は,被告家庭連合の信者であり,平成
23 年当時,被告片桐とともにプレシャスにおいて家系図やその作成につ
いて教えていた。また,町田家庭教会のカリスのスタッフであった。
    斎藤は,運勢鑑定士である。斎藤は,平成 22 年頃,被告家庭連合に入
会し,信者として町田家庭教会に所属し,礼拝に通っている。
    向原は,被告家庭連合の信者であり,平成 25 年から町田家庭教会のカ
リスでスタッフ(カウンセラー)をしている。
    被告松藤は,町田家庭教会の講師であった。なお,被告松藤の夫は,平
成 25 年当時,町田家庭教会の教会長であった。
    被告河内は,被告家庭連合の職員であり,平成 25 年以降は町田家庭教
会の伝道部長として,町田家庭教会に学びに来た者に講義や信仰指導をし
ている。

  (3) 原告の家族関係等
    原告は,昭和 3 0 年■■■■,父,■■■■,と母■■■■の二女と
して出生した。原告の兄弟は,兄である長男■■■■,(昭和 24 年生ま
れ) ,二男・D (昭和 27 年■■■■に出生し,同月■■,に死
亡した。以下「D」という。) ,姉である長女・C (昭和 28 年
生まれ。以下「C」という。) ,弟である三男■■■,(昭和 33 年生ま
れ)である。(甲 7 )
    原告は,昭和 53 年■■■■,Aと結婚し,昭和 5 5 年■■■■,に
は長男のBが出生した。(前提事実( 1 )ア)
    Bには,自閉症や多動性障害があった。
    Aは,平成 10 年 6 月 9 日,脳出血で倒れ,意識不明の状態に陥った。
そして,Aは,意識が回復しないまま,同年 12 月 28 日,享年 48 歳
で死亡した。(前提事実(1)ア)
    Bは,平成 12 年 3 月,■■■■,高等部(4 年制)を卒業し,同年10
月,障害者職業能力開発校に入学して職業訓練を積んだ。そして,Bは,
平成 14 年,化粧品会社に障害者枠で就職した。
カ 母・■■■■,は,平成 15 年 11 月 24 日に死亡し,父■■■■,
は,平成 18 年 11 月 26 日に死亡した。 (甲 7 )
    母・■■■■,は,平成 15 年 11 月 24 日に死亡し,父■■■■,
は,平成 18 年 11 月 26 日に死亡した。 (甲 7 )
    なお,原告は,高校卒業後からデパートで販売の仕事をしていたが,B
の出産を機に退職し,専業主婦となった。その後,平成 8 年頃からは,自
宅近くのメンタルクリニックで医療事務のパートを始めた。平成 25 年当
時,原告の収入は,パートの年収約 160 万円と遺族年金であった

  (4) 原告が家系図を作成するに至る経緯
    原告は,平成 2 0 年頃,知人を介して被告朴と知り合い,原告の自宅で
月 2 回程度,被告朴から韓国語を習っていた。また,原告と被告朴は,一
緒に食事に出かけるなどしていた。
    原告は,ある時,被告朴が被告家庭運合の信者であることを知ったが,
その際,被告朴に対し原告に被告家庭連合の話をしないように求め,被
告朴は,これを了承していた。
    原告は,被告朴に,両親や夫が死亡していること,長男に自閉症等の障
害があることなど,自分の家族のことについて話していた。被告朴は,度
々,原告に対し,人は死後,霊界に留まるとか,子孫の病気や不幸は先祖
の因縁が原因であるなどといった話をしていた。
    Bは,平成 23 年 3 月下句,腰の痛みを訴え,病院での診察や入院検査
を受けた結果,同年4月 20 日頃,直腸がんに罹患していることが判明し
た。原告は,この頃,医師から,Bの余命は 5 か月であると告げられた。
    原告が被告朴に対し,Bががんに罹患したことを話したところ,被告朴
は,原告に対し,Bががんに罹患したのは先祖の因縁が原因であるから,
家系図を作成して家系や先粗について勉強するとよいと告げた。これを聞
いた原告は,Bががんに罹患したのは先祖の因縁が原因なのではないかと
不安になり,被告朴の勧めに応じ,家系図を作成することにした。
(なお,被告朴は,原告に対してBの病気が先祖の因縁であると告げたこ
とはないと供述するが,原告において,Bのがんが発覚し,余命 5 か月と
の宣告を受ける中で,単に家系図の作成を勧められたのみでこれを決意す
るとは考え難いから,被告朴の上記供述は採用することができない。)
    原告は,平成 23 年 4 月下旬頃,被告朴の紹介により,プレシャスを訪
れ,被告片桐及び市川と会った。そこで,原告は,被告片桐から,家系図を
作成するには家系のことを勉強する必要があると聞き,その後,週 1 回程
度の頻度でプレシャスに通いながら,家系や先祖,霊界のことに関するビ
デオを視聴した。また,原告は,戸籍謄本を取り寄せて被告片桐に渡し
被告片桐は,当該戸籍謄本を基に,被告家庭連合において用いられる家系
図のひな形に先祖の氏名や生没年月日,享年などを書き込んで原告の家系
図を作成していった。
    なお,被告片桐は,プレシャスを訪れる者に対し,気持ちでいくらか入
れてほしいと伝えて,かごの中に小さな封筒を置いており,原告もその中
にいくらかの金銭を入れたことがあった。
    原告は,平成 23 年 6 月頃まではプレシャスに通っていたが,その頃,
通うのを止めた。  
    Bは,平成 23 年 6 月頃には,ほぼベッドから起きられない状態となっ
ていたが,同年 7 月 10 日頃,一時帰宅を許可され,同日頃から同月下旬
まで,原告の自宅で過ごした。その後,平成 23 年 8 月頃には,食事もあ
まりできず意識が朦朧とすることが多くなっていった。
    Bは,平成 23 年■■■■,享年 31 歳で死亡した。(前提事実( 1 )ア)
    被告朴,被告片桐及び市川は,Bの葬儀に参列した。
    原告は,Bの死後,ふさぎ込む日々が続いていたが,平成 23 年 11 月
頃にはパートの仕事に復帰した。
    原告は,平成 24 年 6 月頃,市川の連絡を受け,プレシャスを訪れた。
被告片桐や市川は,原告に対し,また家系の勉強をしないかと誘ったが,
原告は,これを断った。

  (5) 原告が町田家庭教会に通うまでの経緯  
    原告は,平成 25 年 3 月頃,被告朴の誘いを受け,同月 27 日,被告片
桐が主催し斎藤が講演する「運勢を高めるメイクアップ開運講座」に参
加した。同講座では斎藤の占いを受けることができたところ,原告は,占
いのテーマとして「仕事運」,「性格」,「人間関係」を選択し,また,老
後の生活や病気,兄弟姉妹の関係について聞きたいと希望し,斎藤の手相
占いを受けた。さらに,原告は,日を改めて斎藤の占いを受けることとな
った。(乙イ 29 )
    原告は,平成 25 年 4 月 4 日,プレシャスにおいて斎藤の占いを受けた。
斎藤は,姓名判断による運勢鑑定をし,その結果を,線グラフで図示した。
すなわち,そのグラフは,満年齢で 50 歳から 63 歳までの間の原告の運
勢のグラフであり,52 歳から 55 歳までは運勢がマイナスで,その後急
上昇して 57 歳(原告の当日時点での満年齢である。)にはピークとなり,
その後再び下降し, 61 歳以降には再びマイナスになっていた。また,グ
ラフの 50 歳から 51 歳への運勢がマイナスに下降している部分に「ご主
人の死」,52 歳から 55 歳までの運勢がマイナスの部分に「ご子息の死」
と記載した。
そして,斎藤は,上記グラフや鑑定結果が記載された書面(乙イ 30)
を原告に示しながら,原告の運勢の下降とAの死やBの死が関係するか
のように告げた。さらに,斎藤は,原告に対し,原告は男性の運気を吸い
取るとか,家庭に入ることで運気が低下するなどと伝えた。これを聞いた
原告は,自分が家庭を築いたためにAもBも死んでしまったのではない
かと思い,ショックを受けた。
他方で,斎藤は,原告に対し,原告は新しいことに手を出せば才能・能
力を発揮できるとか,新しいことに素直に耳を傾け行動すれば吉となると
かいったことを伝えた。 (乙イ 3 0 )
(なお,証人斎藤は,原告に対し,原告の運気が下がっていると断定的に
伝えたことも,そのこととBの死とが関係するかのように説明したことも
ないと証言するが,証人斎藤は,原告の鑑定結果を記載した書面(乙イ 3
0)を説明の際に示したり原告に交付したりした可能性を否定しておらず,
証人斎藤の上記証言は信用できない。
    原告は,斎藤に,なぜ原告の大切な人がいなくなるのか,どうすればこ
のような苦しみを味わわなくなるのかと聞いた。すると,斎藤は,原告に
対し,このままではBも悲しむと述べた上で,町田家庭教会のカリスに行
き,家系や先祖のことを勉強することを勧めた。原告は,Bの不幸は原告
の先祖や家系の問題であり,原告の運勢と結び付いていると思い,町田家
庭教会に行くことにした。
    なお,原告は,斎藤から鑑定のノウハウを教わることとなり,斎藤から
その資料を譲り受け,代金として数万円を支払ったことがあった。

  (6) 原告が町田家庭教会に通い始めてからの経緯  
    原告は,平成 25 年 4 月 7 日,町田家庭教会のカリスに行き,受講の申
込みをした。また,被告片桐は,原告に対し,先祖供養を行うための供養
祭について説明し,原告は,被告家庭連合に先祖供養祭を申し込んだ。(乙
イ 8 )
    原告は,平成 25 年 4 月頃,被告片桐から,完成した原告の家系図(甲
7 )を渡された。被告片桐は,■■家(原告の母の家系)に幼少に亡くなっ
た者が数名いることを指摘したため,原告は,原告の家系何か間題があ
るのではないかと不安を感じた。
(なお,被告朴らは,原告の家系図(甲 7 )にBの死亡年月日の記載がな
いことを指摘し,原告の家系図はBが死亡する前の平成 23 年 6 月には完
成していたと主張するが,家系図の作成には戸籍謄本を取り寄せる必要が
あり,これはBの生前に終えていたのだから(原告本人),Bの死亡年月
日の記載がないことが不自然であるとまではいえない。)
    原告は,平成 25 年 4 月以降,週 3 回程度の頻度で町田家庭教会のカリ
スに通い受講料として,合計 18 万円を支払った。
原告は,カリスにおいて, 1 時間弱のビデオを視聴した。ビデオの内容
は,先祖や霊界,地獄に関するもので,例えば,人が死後,霊界の下の階層
にいて飢えや寒さで苦しんでいるとか,地獄に落ちた先祖は,自らその苦
しみを和らげることができないし,自分の力で霊界の上の階層に上がるこ
とができないとか,先祖の因縁が原因で子孫が病気や事故に遭うとか,恨
霊(恨みや思い残しのある先祖の霊)が生きている人に憑りついていて,
その人が死ぬと,恨霊が同じ家系の人に飛ぶとかいった内容のものも含ま
れていた。なお,カリスにおいては,視聴するビデオの順番が決まってい
た。
また,原告がカリスで受けた講義でも,地獄は,暗く,寒く,悪臭の漂う
世界であるとか,先祖の苦しみが子係の苦痛となって現れるとか,怨みの
霊(悪霊の中でももっとも強く災いをもたらす霊)が人の体に入って苦し
めるとかいった内容も教えていた。
原告は,ビデオの視聴や講義を終えた後,毎回,アンケートに感想を書
き,提出した。その後,町田家庭教会の講師(市川や向原)からビデオの感
想を聞かれて答えたり,AやBの思い出話を聞かれて答えたりしていた。
その際,原告は,AやBへの思いが高まり,涙を流すこともあったが,
そうすると,さらに,講師は,AやBが亡くなる直前や直後の出来事を
聞いたり,AやBが霊界でどうしていると思うか聞いたりした。
このようなビデオ,講義,講師との会話を経て,原告は,AやBが地
獄にいて苦しんでいると思い,不安や恐怖,悲しみを感じるとともに,何
とかしてAやBを救い出さなければならない,何か自分にできることは
ないかなどと考えるようになった。
    原告は,平成 25 年 5 月上句,向原から,地獄へ落ちなくても済む唯一
の方法は祝福結婚をすることであり,原告が霊肉祝福を受ければ,Aや
Bを地獄から救い出すことができ,原告の死後,AとBと 3 人で霊界の
いいところに行くことができるなどと述べ,霊肉祝福を受けるよう勧めた。
原告は,霊肉祝福を受ければ,霊界にいるAやBを地獄の苦しみから救
うことができると思い,霊肉祝福を受けることを決め,向原にその旨を伝
えた。
    原告は,平成 25 年 5 月 15 日,向原から言われて町田家庭教会に行っ
たところ,被告家庭連合の信者で霊肉祝福を受けた女性三,四名がおり,
それぞれ,原告に対し,霊肉祝福を受けた感想を伝え,霊肉祝福を受ける
べきだと言った。原告は,これを受け,自らも霊肉祝福を受けると答えた。
また,向原は,原告に対し,BやDの祝福結婚もできるとして,2 人の
祝福を受けることも勧めたため,原告は,2人の祝福を受けると答えた。
原告,向原及び市川は,同日午後,AとBの墓参りをした。その際,原
告は,向原から言われ,AとBの墓前で,霊肉祝福を受けることになっ
たと述たところ,向原は,原告にAやBが喜んでいるなどと言った。
    原告,向原及び市川は,平成 25 年 5 月 15 日,町田家庭教会に戻った。
向原は,原告が霊肉祝福,BやDの祝福をするとの意思を確認した上で,
一旦部屋を出た。そして,向原は,部屋に戻ってきた後,原告に対し,先祖
供養に 40 万円,原告とAの霊肉祝福に 280 万円,Bの結婚式に 12
万円,Dの結婚式に 12 万円,合計が 344 万円であると告げた。さら
に,向原は,これは地獄で苦しむAやB,D を救うためであると述べ
た。
    前記カを受け,原告は,保険を解約しなければお金を準備できないから
しばらく待ってほしいと伝えたが,市川は,早くしなければならないと原
告を急かした。そこで,原告は,翌日である平成 25 年 5 月 16 日,横浜
銀行■■■支店に行き,保険の解約手続をしたが,解約返戻金の支払まで
に数日を要するとのことであった。原告がその旨を市川に伝えたところ,
市川は,同月 19 日に行われる先祖供養式に間に合うよう,まず先祖供養
の分の 40 万円を用意するように伝えた。
    原告は,平成 25 年 5 月 19 日,町田家庭教会に行き,市川に先祖供養
の分である 40 万円を現金で渡し,先祖供養式を受けた。(乙イ 9 )
    原告は,平成 25 年 5 月 21 日,保険の解約返戻金を受け取れるように
なったことを市川に伝えたところ,市川は,少しでも早く献金を捧げた方
がよいと述べ,原告に,同月 23 日に市川にお金を渡すことを約束させた。
そして,原告は,同日,小田急線■■駅において,市川に対し,304 万円
を現金で渡した。
    原告は,平成 25 年 5 月 26 日,先祖解放の式に参加した。
    原告担当の講師は,平成 25 年 5 月下旬頃(先祖供養のあった同月 19
日より後) ,被告松藤に交代した。
原告は,同年 6 月以降も,週 3 回程度の頻度で,町田家庭教会のカリス
に通った。その間も,前記ウと同様に,霊界や地獄,先袒解怨,不倫や原
罪,堕落に関する内容のビデオを見たり,同様の講義を受けたり,被告松
藤や被告河内からAやBの思い出話を聞かれて答えるなどしていた。な
お,被告松藤や被告河内は,原告に対し,文鮮明の功績についても説明し
ていたが,原告は,この点についてはあまり理解や共感ができなかった。
    原告は,平成 25 年 9 月頃,被告松藤から,原告が同月29 日に霊肉祝
福を受けることになったと伝えられるとともに,霊肉祝福の儀式は,清平
に 3 回行かなければ終わらないと言われた。
    原告は,平成 25 年 9 月 29 日,町田家庭教会において,霊肉祝福を受
けた。
    原告は,平成 25 年 10 月頃,向原から,被告家庭連合には文鮮明のみ
言を集めた経典である「天聖経」,「平和経」,「真の父母経」があるとこ
ろ(なお,「真の父母経」は,当時まだ発刊されていなかった。) ,280
万円を献金すればこれらを授かることができると言われた。原告は,その
金額は出せないと言ったものの,その後,140 万円を献金し,天聖経と
平和経を受領した。そして原告は,天聖経(約 1600 頁)を約 1 年かけ
て訓読した
    原告は,平成 25 年 11 月,韓国の清平に渡航し,清平修練苑(韓国の
世界平和統一家庭連合が運営する修錬施設)において,A,B及びD
の特別解怨のため修錬会に参加した。なお,被告松藤は,これに同行した。
    原告は,平成 26 年 2 月,韓国の清平に渡航し,基元節の国際合同祝福
結婚式の行事に参加した。なお,被告松藤は,これに同行した。
    原告は,平成 26 年 7 月,韓国の清平に渡航し,清平修錬苑において,
霊肉祝福式に参加した。その際,原告は,衣装代として 3 万円,指輪代と
して 1 万 0500 円を支出した。なお,被告松藤は,これに同行した。
    原告は,平成 26 年 9 月,韓国の清平に渡航し,清平修錬苑において,
霊肉祝福に参加した者を対象祝福家庭出発のための修錬会に参加した。な
お,被告松藤は,これに同行した。
    原告は,前記ソないしツの 4 回の清平渡航に際し,37 万円の費用を支
出した。
    原告は,平成 26 年 11 月頃,被告河内から,被告家庭連合がアメリカ
合衆国のラスベガスに建設中の研修施設(ピースパレス)のための献金を
勧め,この献金をすれば「真の父母経」を授かることもできると伝えた。
原告は,これを拒否したが,被告河内は,いくらであれば献金できるかな
どと執拗に聞いた。結局,原告は,140万円の献金を,まず60万円支
払,残りは 3 万円ずつ支払うこととし,その頃,被告河内に63万円を交
付した。
    ナ   原告は,平成 26 年 11 月頃,被告片桐や被告松藤を介して,被告河内
に対し,前記トの 6 3 万円を返してほしいと伝えた。
    原告は,上記のほか,具合の悪い■■■■(原告の兄)のために祈願書
を書き,合計 4 万円の献金を納めたことがあった。また,原告は,原理講
論や聖書,絵画 2 枚(各 4 万円)を購入した。

  (7) Cが町田家庭教会に献金した経緯  
    Cは,昭和 5 1 年■■■■ ,E(昭和 25 年生まれ。以下「健
ー」という。)と結婚した。Eは,平成 25 年 10 月頃,胃がんに罹患
し,平成 26 年 10 月には大腸にがんが転移した。そして,Eは,同年
■■■■,享年 64 歳で死亡した。
    Cは,Eの死後,自宅でふさぎ込んでいたところ,平成 27 年 2 月
頃,原告から誘われ,町田家庭教会に行った。
    Cは,平成 27 年 5 月頃には,被告家庭連合に対し,先祖供養等の献
金として,合計 170 万円を支払うなどした。

  (8) 本件合意書の作成経緯について  
    原告は,平成 27 年 11 月頃,被告河内に対し,前記(6)トの 63 万円の
返金を改めて求めるとともに,天聖経や平和経は原告にとってもう不要な
ものであることを伝えた。すると被告河内は,天聖経と平和経を返せば,
63 万円と 140 万円の合計 203 万円を返金すると述べた。
    原告は,被告河内に言われ,平成 27 年 12 月 29 日,天聖経と平和経
を持って,町田家庭教会に行った。そして,町田家庭教会の 1 室において,
原告と被告松藤,被告河内が面談し,原告は,被告河内に天聖経と平和経
を返し,被告河内は,原告に現金で 203 万円を交付した。また,被告河
内は,203 万円の返金に関する書類であると述べて,書面(本件合意書
の署名押印前のもの)を示し,原告に署名押印を求め,原告はこれに署名
押印をした。その際,被告河内は,原告に対し,上記書面の内容について
説明しなかった。
原告は,その帰り際,被告河内に対し,Bの祝幅結婚式の日程が決まっ
たら教えてほしいと伝えた。

  (9) その後の経緯につい 
    原告は,平成 28 年 1 月以降,町田家庭教会に通うのを止めた。
    原告は,平成 28 年 3 月前半頃,町田家庭教会に行き,被告河内に対し,
これまで被告家庭連合に支払ったお金を返してほしいと求めたが,被告河
内は,その要求を拒否した(なお,原告は河内に返金を求めたのは同年 3
月か 4 月頃であると供述するところ,後記ウのとおり,被告河内が同年 3
月 17 日に本件合意書に確定日付を得たことからすると,原告が被告河内
に返金を求めたのは同月前半頃であると認めるのが相当である。)。その
後,原告は,本件を弁護士に相談した。
    被告河内は,平成 28 年 9 月 17 日付けで,本件合意書に確定日付を得
た。(乙イ 2 )
    被告家庭連合は,原告の代理人弁護士から損害賠償を求める旨の通知書
を送付されたことから,平成 28 年 7 月 22 日,原告の代理人弁護士に対
し,本件合意書による合意は第三者のためする契約であるとして,上記
合意の利益を享受する意思を表示した。(乙ロ 1 の 1 及び 2 )
    原告及びCは,平成 29 年 4 月 11 日,被告らに対し,本件訴訟を提
起した。(当裁判所に顕著な事実)
    C及び被告らは,平成 3 0 年 9 月 3 日の第 1 回弁論準備手続期日にお
いて,訴訟上の和解をした。(当裁判所に顕著な事実)
    被告朴,被告片桐及び被告松藤は,令和元年 11 月 22 日付け最終準備
書面をもって原告に対し,本件合意書による合意が第三者のためにする
契約であるとして,上記合意の利益を享受する意思を表示した。(当裁判
所に顕著な事実)

 3 争点1(本件合意書による和解の効力の有無)について  

  (1) 本件合意書は原告と被告河内の間で取り交わされているから,まず,被告
  河内との関係における効力を検討する。

    原告は,主位的に,203 万円(天聖経と平和経の献金 140 万と,
ピースパレス建設のための献金 63 万円の合計)の献金以外に原告がした
献金(以下,この 203 万円以外の献金を,本項において「その他の献金」
という。)の返金に関しては,第本件合意書による和解の範囲外であると主
張する。
しかしながら,本件合意書の本件清算条項には,「甲〔原告〕は, (中
略)今後,名目の如何を問わず何らの請求(甲の献金等の返還請求を含む)
もしないことを約する。」とあるのだから,原告は,その他の献金につい
て,何らの請求もしないことを約したと認められる。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。  
    次に,原告は,予備的主張の 1 つとして,本件合意書による和解が公序
良俗に反し無効であると主張する。
この点,前記 2 (8)の認定事実によれば,原告と被告河内は,原告が天聖
経と平和経を被告河内に返品し,被告河内が原告のした献金合計 203 万
円を原告に返金するについてだけ話し合っており,その他の献金に関して
は話し合われなかったことが認められる。また,被告家庭連合の信者にお
いて,献金は天に捧げたものであって返金を求めることができないと認識
しているところ(弁論の全趣旨) ,原告は 203 万円の返金を受けた後も
Bの祝福結婚式をする意思を表明していること(前記 2 (8)ウ)からすると,
原告には,本件合意書を取り交わした当時,その他の献金に関して返金を
求めるという考えすらなかったといえる。
そして,このような状況の下,被告河内は,原告の意思を確認せず,原
告がその他の献金の返還請求を含む請求をしないことを約する旨の本件清
算条項を入れた本件合意書を作成した上,本件合意書の内容について説明
しないまま原告に本件合意書への署名押印をさせている。そうすると,本
件清算条項は,原告においてその他の献金に関して返金を求める考えすら
なかったことに乗じて,何らの説明もなしに原告にその他の献金に関する
請求権を放棄させるものであって,その他の献金の金額が少なくとも 36
2 万円(被告家庭連合において収受した献金等である受講料 18 万円,先
祖供養 40 万円,霊肉祝福等 304 万円の合計額)に上ることも考慮する
と,公序良俗に反し無効というべきである。

 
  (2) 被告朴らは,原告と被告河内の話合いにおいて,被告河内が,原告に対し,
 その他の献金の返金を求めないことやCのした献金の返金を求めないこと
などを確認し,確認したところに従って本件合意書(本件清算条項)の文面
を作成したと主張し,被告河内は同旨の供述をする。しかしながら,原告に
おいてその他の献金等に関して返金を求めるという考えすらなかったことは
前記(1)イで説示したとおりであって,原告と被告河内との間の話合いにおい
て,あえてその他の献金の返金に関する原告の意思を確認したとは考えにく
い。また,原告が,姉であるCの意思も確認せずに,Cの献金の返金に
関することについて返答するとも考えにくい。さらに,仮に,被告河内が,
原告との話合いにおいて,原告に対してその他の献金の返金を求めないこと
やCのした献金の返金を求めないことなどを確認したのであれば,その金
額の大きさも併せ考慮すれば,本件合意書作成時に原告に本件清算条項の説
明をしてその点を再度確認したと考えるのが自然であるが,被告河内はその
ような説明をしていない。したがって,被告河内の上記供述は信用できず,
被告朴らの上記主張は採用できない。なお,原告は,み言集に関する献金で
ある 203 万円の返金を求める一方で,その他の献金の返金を求める意思す
らなかったこととなるが,原告は,文鮮明の功績にはさほど関心がなく,文
鮮明のみ言集にもあまり感銘を受けていなかったことが窺われること(前記
2 (6)サ)からすると,原告の言動が不合理であるとまではいえない。

  (3) 以上によれば,その余の点を判断するまでもなく,本件合意書による合意
 により原告の被告らに対する本件訴えは妨げられないから,被告らの本案前
の答弁は理由がない。

 なお,被告家庭連合は,本件合意書による合意をもって原告の被告家庭連
合に対する請求に理由がないと主張するが,上記と同様の理由により,採用
できない。  
 4 争点 2(被告朴らの共同不法行為の成否)について  
  (1) 違法性の判断基準
 まず,被告朴らや被告家庭連合の信者の行為の違法性について検討する。
一般に,特定の宗教団体やその信者が,当該宗教の教義を広め,その宗教
活勲を維持するため,あるいはその教義の実践として,他者に対して任意に
献金等をするよう求めることは,その方法,態様及び金額等が社会的に相当
と認められる範囲内のものである限り,信教の自由に由来する宗教活動の一
環として当然許容されるべきものであり,これを違法ということはできない。

 しかしながら,献金等を求める行為が,相手方に害悪を告知するとか,心
理的な庄力を加えるなどして,ことさらに相手方の不安,恐怖心等をあおる
など,相手方の自由な意思決定に制限を加えるような不相当な方法でされ,
その結果,相手方の正常な判断が妨げられた状態で過大な献金がされたと認
められるような場合には,当該勧誘行為は,社会的に相当な範曲を逸脱した
行為として,違法と評価されるものといわざるを得ない。  
  (2) 以上を踏まえ検討するに,前記 2 の認定事実によれば,原告は,被告朴か
 らBの病気に関する不安をあおられて家系図を作成することを決め,被告片
桐のもとで家系図を作成し,斎藤からAやBの不幸が先祖の因縁によるも
のではないかとの不安をあおられて町田家庭教会に通うようになり,さらに,
町田家庭教会において,ビデオや講義,講師(市川,向原,被告松藤及び被告
河内)との会話によって,AやBが地獄で苦しんでいるとの不安や恐怖心
をあおられ続ける中で,先祖供養や祝福結婚式を受けることとし,これらの
献金をしたことが認められる。
そうすると,被告家庭連合の信者において,原告が町田家庭教会に通うに
当たり原告に受講料(合計 18 万円)の支払を求めることや,原告に先祖供
養や祝福結婚式に関する献金(合計 344 万円)を求めることは,社会的に
相当な範囲を逸脱した行為として違法と評価せざるを得ない。また,原告は,
祝福結婚式をするのに必要であるといわれ,やむなく清平に渡航したもので
あるから,その際に支出した渡航費用( 37 万円)や,霊肉祝福を受けるた
めに支出したと認められる衣装代(3 万円) ,指輸代( 1 万 0 5 0 0 円)につ
いても,損害と評価すべきである。

  (3) その他の損害について

    原告は,家系図作成の会費を支払ったと主張するが,被告片桐が家系図
を学びに来る者から得ていた金銭は任意の支払によるものであって(前記
2 (4)キ),原告が被告片桐にいくらかの金銭を支払っていたとしても,そ
の支払に関して殊更に原告の不安や恐怖心があおられたものとは認められ
ないから,この点に違法があると評価することはできず,原告の上記主張
は採用できない。
    原告は,斎藤に対し,占い代として 5 0 0 0 円を支払ったと主張するが,
仮にこれを支払っていたとしても,原告が斎藤の占いを受けること自体に
不相当な方法が用いられたとは認められないし,その金額は占い代として
相当な範囲を超えるものではないから,これを違法ということはできず,
原告の上記主張は採用できない。
    原告は,祈願料や原理講論代,聖書代,絵画代を支出したことを損害と
主張するが,これらを支出した経緯に違法というべきところがあるとはい
えないから,原告の上記主張は採用できない。

  (4) 被告朴らの責任について  

     原告は,被告朴らは,被告家庭連合とも共同して,被告家庭連合の教え
や信仰に基づき,被告家庭連合の組織的な資金獲得活動として,相互に役
割分担や連携をしながら一連の不法行為をしたとして,被告朴らが共同不
法行為責任を負うと主張する。そして,原告は,この点について,過去に,
被告家庭連合に多額の献金をさせられたと主張する者が被告家庭連合に対
して不法行為責任や使用者責任に基づいて損害賠償を求める訴訟を提起
し,複数の訴訟において被告家庭連合の責任が肯定されていること,これ
らの訴訟での事案と本件の事案の特徴が類似すること,被告家庭連合の関
連会社や信者らの違法行為が刑事事件においても肯定されていることなど
を指摘する。

 しかしながら,前記(1)において説示したとおり,特定の宗教団体やその
信者において他者に献金等をするよう求めることは,社会的に相当な範囲
内のものである限り,宗教活動の一環として許容されるものであるところ,
原告の上記指摘を踏まえても,被告家庭連合につき,個々の事案の事実関
係に応じて,社会的に相当な範囲を超える勧誘活動がなされたとして違法
と評価されることがあるというにとどまり,一般に,被告家庭連合やその
信者において,組織的な資金獲得活動として社会的に相当な範囲を超える
違法な活動をしていたとまで認めることができる証拠はない。
そこで,本件の事実関係を踏まえ,被告朴らに共同不法行為責任が肯定
されるか否かを検討することとする。  

    被告朴の責任について
 前記 2 (4)の認定事実によれば,被告朴は,原告に家系図の作成を勧誘し
たものであり,その際,被告朴は,Bの病気に関する原告の不安をあおっ
ているから,その方法は適切でなかったといわざるを得ない。また,被告
朴は,原告の霊の親(伝道した者)とされていることからすると(被告朴
本人) ,原告を被告家庭連合の信者になるよう勧誘したのは被告朴である
といえる。

 しかしながら,被告朴の関与は上記の程度にとどまり原告が町田家庭
教会に通うようになったり,先祖供養や祝福結婚式を受けることになった
りしたことについて,何らかの関与をしたと認めるに足りる証拠はない(な
お,被告朴は,斎藤の講演する「運勢を高めるメイクアップ開運講座」に
原告を誘っているが,後日,原告が斎藤の占いを受けることになったこと
や,その後の経緯について関与したとまでは認められない。)。
したがって,被告朴は,原告に対し,不法行為責任を負うとはいえない。

    被告片桐の責任について
 前記 2 (6)の認定事実によれば,被告片桐は,原告が町田家庭教会に初め
て来た日に,原告に先祖供養について説明し,その申込みをさせている。
この点,被告片桐は,以前に原告の家系図を作成していたこと(前記 2
(4)カ) ,斎藤がプレシャスにおいて原告に町田家庭教会に行くよう勧めた
ことにつき斎藤から話を聞いていたこと(被告片桐本人),斎藤から原告
が町田家庭教会に行く日を伝えられており,原告が町田家庭教会に初めて
来た日に先祖供養を勧めていること(前記 2 (6)ア及び被告片桐本人) ,原
告は,先祖供養の献金額を後日伝えられていること(前記 2 (6)カ)からす
ると,被告片桐は,原告が,Bの不幸は先祖や家系の問題であると不安を
あおられて町田家庭教会に来たことを知りながら,その不安に乗じ,原告
が町田家庭教会に来た初日に先祖供養をすることを勧め,その際に必要な
献金額を告げることなく,先祖供養を申し込ませたものというべきである
から,上記行為は,社会的に相当な範囲を逸脱したものといえる。
もっとも,被告片桐の関与は上記の程度にとどまり原告が町田家庭教
会に通い続けたことや,祝福結婚式の献金をしたことについて,何らかの
関与をしたと認めるに足りる証拠はない。
 したがって,被告片桐は,先祖供養に関する献金 40 万円の限度で不法
行為責任を負う。

    被告松藤の責任について
      (ア) 前提として,向原及び市川の責任について検討する。
前記 2 の認定事実によれば,向原及び市川は,原告に,カリスにおい
て,ビデオ視聴や講義,その後にAやBの思い出を聞き出すなどして,
AやBが地獄で苦しんでいるとの不安や恐怖心をあおった上で,地獄
へ落ちなくても済む唯一の方法は祝福結婚式であるなどと告げて,原告
に祝福結婚式を受ける決意をさせた後,献金額を告げ,更に支払を急か
しているのであって,向原及び市川が原告に祝福結婚式の献金を求めた
ことは,社会的に相当な範囲を逸脱し違法というべきである。また,向
原及び市川は,原告が先祖供養を申し込んでいることを知り,その献金
額をも原告に伝え,これを支払わせていることから,向原及び市川は,
先祖供養の献金についても責任を負うというべきである。したがって,
向原及び市川は,少なくとも,先祖供養や祝福結婚式の献金合計 344
万円につき,共同不法行為責任を負う。 

      (イ) 前記 2 の認定事実によれば,被告松藤は,原告が先祖供養を受けた後
に原告の担当講師となり,カリスにおいて原告にビデオ視聴や講義,そ
の後にAやBの思い出を聞き出すなどしていた。
さらに,被告松藤は,向原が原告に祝福結婚式を受けるよう勧誘し
たことを知っていたこと(乙イ 4 ) ,原告に対し,霊肉祝福のために
清平 に行く必要があると告げたこと(前記 2 (6)シ) ,向原が原告に天聖経等
に関する献金を求めた際にもこれに関与していること(乙イ 4 ,証人向
原)からすると,被告松藤は,少なくとも向原との間で,原告への献金
勧誘に関して意思疎通があったものというべきである。
したがって,被告松藤は,町田家庭教会の受講料18万円,先祖供養
や祝福結婚式の献金344方円,清平渡航費用37万円及び霊肉祝福に
関する費用合計4万 0 5 0 0 円(衣装代 3 万円,指輪代 1 万 0 5 0 0 円)
につき,不法行為責任を負う。

    被告河内の責任について
 前記 2 の認定事実によれば,被告河内は,原告が先祖供養を受けた後,
被告松藤とともに,カリスにおいて原告にビデオ視聴や講義,その後にA
やBの思い出を聞き出すなどしていた。
 また,被告河内は,町田家庭教会の伝道部長であって,町田家庭教会に
おける伝道活動を統括する立場にあったこと(前記 2 (2)キ),前記(2)で違
法と認められた行為は,いずれも主に町田家庭教会のカリス等の施設内に
おいて,町田家庭教会のスタッフ(被告片桐,被告松藤,向原及び市川)が
行った行為であること,被告河内は,原告が先祖供養及び祝福結婚式並び
に天聖経及び平和経に関する献金をしたことを把握しており,原告の真の
父母経に関わるピースパレスの献金については直接関与していたこと(被
告河内本人,前記 2 (6)ト) ,被告河内は,原告が被告家庭連合やその関係
者に天聖経等の献金以外の献金の返金請求をすることを心配して,原告が
被告河内の関係団体及び被告家庭連合に対し献金等の返還請求を含めて名
目のいかんを問わず何らの請求をしないことなどを内容とする本件清算条
項を入れた本件合意書を作成し,原告に署名押印させていること(乙イ 1,
被告河内本人)からすると,被告河内は,被告松藤や向原との間で原告へ
の献金勧誘に関して意思疎通があったか,被告松藤や向原による原告への
献金勧誘の状況を知りながらこれを容認していたものと認めるのが相当で
あるである。
 したがって,被告河内は,町田家庭教会の受講料 1 8 万円,先祖供養や
祝福結婚式の献金 3 4 4 万円,清平渡航費用 3 7 万円及び霊肉祝福に関す
る費用合計 4 万 0 5 0 0 円(衣装代 3 万円,指輪代 1 万 0 5 0 0 円)につ
き不法行為責任を負う。
  (5) まとめ  
 以上によれば,被告松藤及び被告河内は,前記(2)において違法と認められ
る部分全てにつき共同不法行為責任を負い,被告片桐は,先祖供養に関する
献金 4 0 万円の限度で被告松藤及び被告河内と共同不法行為責任を負う。こ
れに対し,被告朴は原告に対し不法行為責任を負うとはいえない。

 5 争点 3 (被告家庭連合の責任の有無)について  

  ( 1 ) 共同不法行為責任について
  原告は,前記 4 (4)アにおける主張と同様に,被告家庭連合についても,被
告朴らと共同して,共同不法行為責任を負うと主張するが,前記 4 (4)アにお
いて説示したとおり,被告家庭連合において,一般に,組織的な資金獲得活
動として社会的に相当な範囲を超える違法な活動をしていたとまで認めるこ
とができる証拠はないから,原告の上記主張は採用することができない。

  ( 2 ) 使用者責任(民法 7 1 5 条 1 項)について
     ア 宗教団体は,その信者が第三者に加えた損害について,当該信者との間
に雇用等の契約関係がある場合はもちろん,これがない場合であっても,
当該信者に対する直接又は間接の指揮監督関係を有しており,かつ,加害
行為が当該宗教団体の宗教的活動等の事業の執行等につきなされたものと
認められるときは,民法 7 1 5 条 1 項所定の使用者責任を負うというべき
である。 

     イ これを本件についてみるに,まず,原告に対する加害行為は,原告が町
田家庭教会に通うよう勧誘したり,先袒供養や祝福結婚式の献金を勧誘し
たりしたことであり,いずれも被告家庭連合の宗教活動の事業の執行につ
きなされたものと認められる。
次に,被告河内は被告家庭連合の職員であるから,被告家庭連合は被告
河内のした不法行為について使用者責任を負う。
また,被告河内は町田家庭教会の伝道部長であり,町田家庭教会の教会
長を上司とし,更にその上部の者として伝道教育部長があること(被告河
内本人)からすると,被告家庭連合は,被告家庭連合の信者(少なくとも
被告片桐,被告松藤,市川及び向原)に対する関係においても,信者への
献金勧誘に関し,直接又は間接の指揮監督関係を有するというべきである。

    以上より,被告家庭連合は,被告家庭連合の信者(被告片桐,被告松藤,
被告河内,市川及び向原)が原告に対してした前記 4 の不法行為につき
使用者責任を負う。

 6 争点 4 (損害の有無及びその額)について  

  ( 1 ) 財産上の損害
 前記 4 (2)のとおり,原告が被った損害は,次のとおりと認められる。  
    町田家庭教会の受講料 1 8 万円(前記 2 (6)ウ)  
    先祖供養の献金 4 0 万円(前記 2 (6)ク)
    霊肉祝福の献金 2 8 0 万円(前記 2 (6)ケ)  
    A及び B の祝福結婚式の献金 2 4 万円(前記 2 (6)ケ) 
    清平への渡航費 3 7 万円 (前記 2(6)テ)  
    霊肉祝福の衣装代 3 万円(前記 2 (6)チ)  
    霊肉祝福の指輪代 1 万 0 5 0 0 円(前記 2 (6)チ)  
    合計 4 0 3 万 0 5 0 0 円  
    ただし,前記 4(5)及び 5 のとおり,被告家庭連合,被告松藤及び被告河
内は全額,被告片桐は 4 0 万円(前記イ)の限度でそれぞれ賠債責任を負
う。

  ( 2 ) 慰謝料  
 前記 4 のとおり,被告家庭連合の信者の原告に対する行為には,社会的相
当性を逸脱する違法な行為であると評価されるべきものがあり,原告は,町
田家庭教会に通っていた約 2 年にわたり,不安をあおられたり,多額の献金
をさせられたりするなどして,精神的苦痛を受けたものと認められる。そう
すると,前記(1)のとおり財産上の損害を認め,これが填補されるとしても,
なお慰謝することのできない精神的苦痛に対する慰謝料として,30 万円を
相当と認める。
そして,被告家庭連合,被告松藤及び被告河内は全額の賠償責任を負う。
被告片桐は,その違法行為は前記 4 (4)ウの限度にとどまるから,慰謝料につ
いては賠償責任を負わないとするのが相当である。

  ( 3 ) 弁護士費用相当額
 本件訴訟の内容及び認容額を考慮すれば,不法行為と相当因果関係のある
弁護士費用は,損害額の約 1 割である 4 3 万円を相当と認める。
そして,被告家庭連合,被告松藤及び被告河内は全額の賠償責任を負う。
被告片桐は,その違法行為は前記 4 (4)ウの限度にとどまり,賠償責任を負う
損害額は 4 0 万円であるから(前記( 1 )) ,その 1 割である 4 万円を相当と認
める。

  ( 4 ) 合計
 以上より,被告家庭連合,被告松藤及び被告河内は合計 4 7 6 万 0 5 0 0
円の,被告片桐は合計 44 万円の各賠償責任を負う。

 7 結論
よって,原告の請求は,被告家庭連合,被告松藤及び被告河内に対し,4 7
6 万 0 5 0 0 円及びこれに対する不法行為後の日である平成 27 年 12 月 31
日から支払済みまで民法所定の年 5 分の割合による遅延損害金の連帯支払(た
だし,被告片桐に対する認容額の限度で被告片桐とそれぞれ連帯して)を求め,
被告片桐に対し,被告家庭連合,被告松藤及び被告河内と連帯して 44 万円及
びこれに対する前同日から支払済みまで前同割合による遅延損害金の支払を求
める限度で理由があるからこれらを認容し,上記各被告に対するその余の請求
及び被告朴に対する請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することと
し,主文のとおり判決する。

   東京地方裁判所民事第 4 部