◆損害賠償請求事件 東京高裁判決(平成22年8月4日)


この事件の一審判決(東京地裁平成21年12月24日判決)は→こちらに掲載しています。

平成22年8月4日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 五ノ井善成
平成22年(ネ)第486号損害賠償請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成20年(ワ)第13473号)
口頭弁論終結日 平成22年6月23日
判  決
東京都渋谷区松涛一丁目1番2号
控訴人兼被控訴人  世界基督教統一神霊協会
(以下「第1審披告協会」という。)
代表者代表役員  梶栗 玄太郎
訴訟代理人弁護士 鐘  築 優

控訴人兼被控訴人  B
(以下「第1審被告B」という。)

控訴人兼被控訴人  C
(以下「第1審被告C」という。)

控訴人兼被控訴人  D
(以下「第1審被告D」という。)
上記3名訴訟代理人弁護士 福本 修也


被控訴人兼控訴人 A
(以下「第1審原告」という。)
訴訟代理人弁護士 渡辺 博
         李 春熙

主  文
1 第1審原告の控訴に基づき,原判決の第1審原告敗訴部分のうち,次項の請求に係る部分を取り消す。
2 第1審被告らは,第1審原告に対し,連帯して,5563万6135円及びうち5363万6135円に対する同年5月16日から支払済みまで,うち200万円に対する第1審被告協会につき平成20年5月30日から,第1審被告B,第1審被告C及び第1審被告Dにつき同月31日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 第1審原告のその余の控訴及び第1審被告らの控訴をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は,第1,2審を通じて,これを100分し,その33を第1審原告の負担とし,その余を第1審被告らの負担とする。
5 この判決の第2項及び第4項は,仮に執行することができる。

事 実 及 び 理 由

第1 控訴の趣旨
1 第1審原告
(1) 原判決中,第1審原告敗訴部分を取り消す。
(2) 第1審被告らは,第1審原告に対し,原判決主文第1項の金員のほか,帯して,1億2599万5510円及びうち40万円に対する平成元年10月29日から,うち726万3969円に対する平成2年6月27日から,うち382万6000円に対する平成3年4月1日から,うち5363万6135円に対する同年5月16日から,うち110万円に対する同年11月30日から,うち170万円に対する平成7年8月31日から,うち70万円に対する平成9年3月10日から,うち1200万円に対する同年11月28日から,うち932万円に対する平成12年4月30日から,うち694万9406円に対する平成5年6月19日から,うち2910万円に対する第1審被告協会につき平成20年5月30日から,第1審被告B,第1審被告C及び第1審被告Dにつき同月31日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3) 訴訟費用は,第1,2審を通じ,第1審被告らの負担とする。
(4) (2)及び(3)につき仮執行宣言

2 第1審被告協会
(1) 原判決中,第1審被告協会敗訴部分を取り消す。
(2) 前項の取消しに係る第1審原告の請求を棄却する。

3 第1審被告B,第1審被告C及び第1審被告D(以下「第1審被告個人ら」という。)
(1) 原判決中,第1審被告個人ら敗訴部分を取り消す。
(2) 前項の取消しに係る第1審原告の請求をいずれも棄却する。

第2 事案の概要
1 本件は,第1審原告が,第1審被告協会の信者である第1審被告個人らの行った違法な献金及び物品の購入の勧誘行為により,総額1億8306万9610円の献金及び物品の購入をさせられ,財産上の損害(1億8306万9610円),慰謝料(1838万円)及び弁護士費用相当損害金(2022万円)の合計2億2166万9610円に及ぶ損害を被ったと主張して,第1審被告協会に対し民法709条,715条に基づき,第1審被告個人らに対し民法709条に基づき,損害賠償金合計2億2166万9610円及びうち財産上の損害1億8306万9610円に対する各不法行為の日から,うち慰謝料及び弁護士費用相当損害金の合計3860万円につき本件訴状送達の日の翌日(第1審被告協会につき平成20年5月30日,第1審被告個人らにつき同月31日)から各支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

2 原判決は,上記献金の勧誘行為の一部について違法性を認め,第1審原告の第1審被告らに対する請求のうち,財産上の損害(8617万4100円),慰謝料(100万円),弁護士費用(850万円)の合計9567万4100円及びこれに対する遅延損害金の請求を認容した。これに対して,第1審原告及び第1審被告らの双方が控訴した。

3 前提事実並びに争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり付け加えるほか,原判決「事実及び理由」中の第2の1及び3記載のとおりであるから,これを引用する。

(原判決の補正)
(1) 原判決書9頁1行目の「結果,」の次に「献金を行わなければ日本が滅びてしまうと畏怖,誤信した」を加え,同頁11行目の「170万円を祝福献金名下に」を「祝福献金名下に140万円,蕩減献金名下に30万円の合計170万円を」に,同頁15行目の「原告をして、」の次に「同月10日,大韓民国京畿道加平郡の」を加え,同頁19行目の「同月10日」を「同日」に改める。

(2) 13頁15行目及び同頁20行目の各「被告統一協会」を削り,同頁15行目の「祝福献金」の次に「等」を加え,同頁22行目の「清平修練苑」を「天宙清平修練苑」に改める。

(3) 16頁17行目の冒頭から同頁20行目の末尾までを次のとおり改める。
「第1審被告協会の資金獲得活動は,当初から,対象者に対して,共通のマニュアルに基づいて先祖因縁の話をして畏怖させ,多額の資金を集めるという違法な目的の下に,組織的,計画的に献金勧誘行為を行い,継続的に対象者に資金を拠出させるものであるところ,前記(1)の(第1審原告の主張)のアからコまでの第1審被告個人らを含む第1審被告協会の信者らの献金及び物品の購入の勧誘行為は,いずれも第1審被告協会によってその組織的活動の一環として,第1審原告のすべての資産を収奪することを目的とし,先祖因縁の恐怖等をことさらにあおりながら,金員の拠出等を要求することにより行われたものであり,その目的,手段,結果のいずれの観点から考察しても,宗教活動として許容される範囲をはるかに逸脱したものとして,第1審被告協会自身の不法行為と評価することができる。」


第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は,第1審原告の請求は,財産上の損害については,平成2年中の自宅マンションに関連する献金8617万4100円のほか,平成3年の株式売却による献金5363万6135円及びこれらに対する遅延損害金,慰謝料150万円,弁護士費用1000万円の限度で理由があり,その余はいずれも理由がないと判断する。その理由は,次のとおり付け加えるほか,原判決「事実及び理由」中の第3の1ないし4記載のとおりであるから,これを引用する。

(原判決の補正)
(1) 原判決書18頁15行目の「しかし,」から19頁10行目の末尾までを,行を改めた上,次のとおり改める。
「そこで検討するに,証拠(甲B66,乙ロ4から6まで,乙ロ8,第1審原告本人,第1審被告個人ら各本人)によれば,次のとおり認められる。

第1審原告の父は昭和●年●月●日に,母は昭和●年●月●日に死亡しているため,平成元年は第1審原告の父の●回忌,母の●回忌を迎える年であり(乙ロ8),父母それぞれの法要の節目になる年忌法要の年に当たっており,第1審原告も平成2年4月に父の妹が主宰する第1審原告の父母の年忌法要に参席したこと(乙B66)が認められ,第1審原告において,第1審原告において年忌法要の呼称を誤解してはいるが,平成元年が第1審原告の父母の年忌法要の年であることに運命的なものを感じたことや,30歳代で家を出て親元には帰らずに一人暮らしをし,父母の面倒を父方のおばに任せ切りにしていた負い目や独身のまま過ごしてきてしまった後悔のあったことを否定することはできないが,同時に,第1審原告は,本当は両親の子ではないのではないかという思いを消し切れずにおり,第1審被告個人らに対して,自らが両親の実子ではなく,養子であるとか,橋の下で拾われたとか,両親には情が行かないと述べていたこと,第1審原告が第1審被告協会の世田谷区の豪徳寺駅近くのビデオセンターに通うことになったのも,第1審原告は,Eからは,先祖や家系について勉強しなければならないと誘われたのであるが,それには興味がなく,Eが述べた「真の愛」について関心を持ったからであったことが認められるのであるから,上記印鑑の購入が,霊界にいる両親を救い出すためにしたものであり,先祖因縁の恐怖に基づくものであるとする第1審原告の陳述書及び本人尋問の結果中の上記供述記載部分及び上記供述部分は,採用することができない。

もっとも,第1審被告Bは,第1審原告に対し,親は誰よりも大切な存在であり,親は子のためを思い,子は親のためを思うべきことや,第1審原告が先祖の前に喜んで感謝していけば,先祖も喜んで感謝することを説いたり,第1審原告を第1審原告の父母の祥月命日に墓参りに連れ出したりしていたほか,第1審被告Dらの第1審被告協会の信者らが第1審原告に対して先祖因縁の話をしていたのであるが,平成3年5月には,第1審被告Bにおいて,第1審原告の人生の節目となる年齢において付き合っていた男性が健康を害していることを引き合いに出すなどしながら,先祖因縁と先祖の解怨等を説いたのであり,そのような第1審被告Bらの第1審原告に対する働きかけにより,上記認定のように先祖や両親のことには余り関心がなく,Eが述べた「真の愛」について関心を持っていた第1審原告が,その後,遅くとも平成3年5月ころには,先祖因縁の恐怖を覚え,霊界にいる両親を救い出さなければならないという認識を形成するに至ったことが認められる(甲B56から59まで,甲B66,乙ロ4,第1審原告本人,第1審被告B本人)。そうすると,平成3年5月以前から,上記献金等を霊界にいる

両親を救い出すためにしたという第1審原告の陳述書及び本人尋問の結果中の上記供述記載部分及び上記供述部分も採用することができない。

したがって,第1審原告の陳述書及び本人尋問の結果中の上記供述記載部分及び上記供述部分のうち,上記各部分を除いて本件の経緯を認定することになる。」

(2) 19頁14行目の「甲B41,」の次に「甲B66」を加える。

(3) 20頁17行目から同頁18行目にかけての「原告に対し,」の次に,次のとおり加える。
「「運命というのはあなたの力では決まらないのです。先祖の因縁の力で良くも悪くもなるのです。」,「あなたの先祖は今,霊界で苦しんでいます。先祖が救われるかどうかもあなた次第です。」などと述べるなどして,」

同頁21行目から同頁22行目にかけての「上記印鑑購入の具体的な態様は不明である。」を次のとおり改める。
「しかし,先生と称する人物が,第1審原告が印鑑を購入する際に,第1審原告に対し,上記のような発言をしたとしても,前記認定のとおり,原告は,Eからもっと先祖のことや家系のことを勉強する必要があると言われたが,それには興味がなく,Eが述べた「真の愛」について関心があったというのであるから,第1審原告においては,先生と称する人物による上記の先祖因縁に関する言説により,正常な意思決定が妨げられて,印鑑を買えば,今地獄で苦しんでいる第1審原告の先祖や両親が救われ,その結果,第1審原告の運命も向上し,第1審原告自身も救われるなどと考えたとは認められない。」

(4) 21頁4行目「原告に対し,」の次に,次のとおり加える。
「先祖因縁の話に関連して,「人生について勉強し,運勢を良くしていかなくてはならない。人生について勉強できるところがあるので,そこに通いなさい。」と述べるなどして,先祖や家系について勉強しなければならないことを告げるとともに,」

(5) 22頁6行目の「 原告は」を「ア 第1審原告は」に,同頁7行目の「短刀」を「日本舞踊用の短刀」に,同頁11行目の「悩んていた」を「悩んでいた」にそれぞれ改める。

同頁13行目の「被告Cは,」から同頁18行目の末尾までを次のとおり改める。
「第1審被告Cは,第1審被告協会に対する献金額を確保するため,第1審原告に自宅マンションを担保に借入れをさせて,借入金を第1審被告協会に貸し付けさせ,その後の時期をみてこれを第1審被告協会に対する献金に振り替えさせようと考え,第1審原告に告げることなく自宅マンションの登記簿謄本を入手し,Gから自宅マンションを担保に7000万円を借り入れることが可能であることを確認した上,第1審被告Bや第1審被告Dに対し,時期をみて第1審被告協会への献金に切り替えさせることを前提に,第1審被告協会の教義を説くなどしながら,第1審原告をして,自宅マンションを担保に7000万円を借り入れさせて第1審被告協会に対して貸付期間を3年とする約定で全額を貸し付けさせるように勧誘するように指示した。」

同頁19行目の「 原告は」を「イ 第1審原告は」に改める。

同頁21行目の「原告に対し,」の次に,次のとおり加える。
「「Aさん,話があります。Aさんは今マンションを持ってますね。そのマンションを担保に入れてお金を貸してくれませんか。」と述べ,第1審原告において,貸付けをしなければならない理由として,」

(6) 23頁3行目の「聖別」を「聖別したり清めたり」に改める。

同頁10行目の冒頭から同頁11行目の「原告は,」までを次のとおり改める。
「その結果,かねてから不倫関係にあった男性のことを精神的に清算し切れずにいた第1審原告は,自宅マンションを聖別しなければ,不倫関係にあった男性との関係を精神的に清算することができず,神の真の愛を中心とした新たな家庭を築くことができないとの不安にかられ,第1審被告Cの申入れを受け入れ,」

(7) 24頁13行目の「交付した」を「交付し,同日付けの預り証(甲B61)を受け取った。」に改め,同頁21行目の「甲B41」の次に「から44まで」を加える。

(8) 26頁6行目の「強い因縁を」から同頁11行目の末尾までを次のとおり改める。
「強い因縁を持っているなどと言われたことから,第1審被告協会に対する貸付けを決意した旨の供述記載部分及び供述部分があるところ,上記供述記載部分及び上記供述部分に係る第1審被告Bの発言があった可能性は否めないが,前記認定のとおり,第1審原告が上記の貸付行為に及んだのは自宅マンションを「聖別」するためであったと考えるのが自然であることに照らして,第1審被告Bによる財産に係る因縁に関する発言が第1審原告が第1審被告協会に対する貸付けを決意した動機になったという第1審原告の供述は直ちに採用することができない。」

同頁17行目の「しかし,」から27頁8行目の末尾までを次のとおり改める。
「確かに,第1審原告の抱いた自宅マンションを聖別しようとする意図に加え,第1審原告の株式売却の事実が存在し,しかも,当時の第1審原告にこのような資金需要がなかったこと(第1審原告本人)を併せ考えると,第1審原告は,第1審被告Bの求める7000万円の貸付けを実践したものとして既に同年6月27日付け金銭消費貸借契約書(甲B8)の交付を受けていたものではあるが,自宅マンションを聖別する必要を考えていたことから,実際には第1審被告Cに対して交付することができた金員が6234万9131円と7000万円に満たなかったため,差額を補充することを思い立ち,平成2年7月25日,第1審原告保有の株式会社●●の株式2000株を774万円で売却し,同月30日,手数料等が控除された757万0700円を受領したことが認められる(甲B9,40,第1審原告本人)。しかし,この757万0700円は7000万円の第1審被告協会への貸付金の一部とするつもりで被告協会の信者に交付したことについては,第1審原告自身が,本人尋問において,第1審被告協会の信者に7000万円の不足分の追加である旨の説明をしていないかもしれないこと,第1審被告らによる経理的な処理として,上記株式の売買代金が上記7000万円の貸付金自体に充てられたか分からないことを供述するだけでなく,後になって不足分を信徒会が負担すると知ってがっかりした旨の供述もしていること(第1審原告本人尋問調書16頁,17頁,88頁,89頁)に加え,交付相手,交付状況が証拠上明らかでないことを併せ考えると,株式の売却金を実際に貸付金に追加して第1審被告協会に交付したことを認めるに足りず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。」

(9) 27頁15行目の「などと述べ」から同頁16行目の「などと述べた。」までを次のとおり改める。
「などと述べたところ,これに対し,かねてより貸金を献金に振り替える機会を窺っていた第1審被告Bにおいて「教会の近くに引っ越してこられてもいいですね。」などと述べるなどし,第1審被告B及び第1審被告Dにおいてこもごも第1審原告の転居のために自宅マンションを売却するという意志を翻意させずに固めさせるような話をした。」

同頁18行目の「被告Bは,」の次に「第1審原告の結婚願望を把握していたことから,」を加える。

同頁21行目の末尾に次のとおり加える。
「,「このままでは先祖は地獄で苦しみ続けることになる。親孝行できませんよ。地獄というのは息のできない永遠の世界で,そんなところに先祖を放っておいてはいけません。」」

(10) 28頁2行目の「色情因縁を解消することができず,新しい出発」を「先祖に由来する色情因縁を解消することができず,新たに神の真の愛を中心とした家庭を築くという新しい出発」に改める。

(11) 29頁16行目の「弁論の全趣旨」を「甲B60」に改める。

(12) 30頁8行目の冒頭から同頁11行目の「同月I3日,」までを次のとおり改める。
「(7)平成3年5月の献金
第1審原告は,平成3年4月に世田谷区内の賃貸マンションに引っ越し,サミットと並行して第1審被告協会の世田谷教会にも通うようになった。第1審原告は,同年5月12日,日曜礼拝でFから統一運動に関する全体講話を受けた後,第1審被告Bから「Aさん,今教会でお金が足りないのです。だから2000万円をすぐ用意してください。」と言われた。第1審被告Bは,さらに,「今,Aさんは54歳で7年周期でやってくる転換期にある。」と言った上で,第1審原告が上京した30歳を基点に7年周期を見ると,第1審原告が付き合っていた前記不倫関係にあった男性が,第1審原告の37歳時に糖尿病検査を受診し,45歳時に脳血栓で倒れたことをメモ用紙に書き出しつつ,「決断しなければならない。神様との間の責任分担を果たさなければならない。」,「万物を捧げて天に近付かないと,先祖は解放されない,解怨も果たされない。」,「霊界にいる先祖を救うためには,Aさんもお金を捧げないといけない。」などと献金を求めた。第1審原告は,献金することにより先祖の解怨をしなければならないと畏怖したことから,これに応じることとした。第1審原告は,同月13日,勤務先から休暇を取ることができなかったため,」

同頁16行目の「その後」から32頁9行目の末尾までを次のとおり改める。
「上記株式及び実印を第1審被告Dに預け,勤務先である●●に戻った。第1審被告Dは,第1審原告に預けられた実印を利用し,●●證券株式会社において,上記各株式を合計5363万6135円で売却する手続を行い,同月16日,第1審被告協会の信者が,●●證券株式会社から上記各株式の売買代金合計5363万6135円を受領し,同月25日,第1審原告が5300万円を献金したことに係る第1審被告協会主催の献金式が開催された。なお,第1審原告は,2000万円の用立てを要請されたのに, 5300万円を献金させられたことについて不満はあったが,差額の返還を求めることにより,第1番被告協会に対する信仰から自己に何らかの災厄が及ぶのではないかと恐れたため,5300万円の献金とされることを黙認した。(甲B14,甲B40,甲B59,甲B66,乙ロ2,乙ロ3の1,乙ロ6,乙ロ16,第1審原告本人,第1審被告D)

@ 第1審原告が第1審被告協会の信者から献金を求められた際の相手方及び相手方の発言内容は,第1審原告の陳述書(甲B40,甲B66)間において相違しており,しかも,第1審原告は本人尋問において,第1審被告Bから第1審被告協会への2000万円の貸付けを求められたが,第1審被告Bの具体的な発言は記憶にない旨供述しているものであるが,改めて資料の整理をする過程で発見した第1審被告B作成のメモ(甲B59。第1審被告Bも自己が作成したことは認めている[乙ロ14]。以下「本件メモ」という。なお,第1審被告Bは作成時期を平成2年6月と争うので,作成時期については後記Aにおいて検討する。)により,献金を要請したのが第1審被告Bであり,その献金要請時の発言内容の記憶が喚起されたとすることを疑うべき事情もないこと,また,当初から,2000万円の献金要請があったことを中核とする5300万円の献金の経緯に関する主張を一貫して行ってきたこと,後記Bで述べるように,上記各株式を売却する際の第1審被告Dの供述記載及び供述の内容には採用できない点があることを併せ考えると,前記認定の献金に至る経緯を認めることができる。第1審被告協会の信者において第1審原告に対する2000万円の献金要請をした事実はなく,かえって,講師のFの話に感動した第1審原告が自発的に献金の申出をし,5300万円の献金をしたとする第1審被告らの供述記載及び供述部分は,上記第1審原告の供述等の変遷や献金式の様子を撮影した乙ロ3の1の写真を考慮しても,採用することができない。

A 本件メモは,その記載の体裁から見て,第1審被告Bが第1審原告に何かを説明するために用いられたものといえ,その上部の第1審原告の年齢と7年周期を重ね合わせた図面部分では,第1審原告の40歳を起点に,54歳を極めて重視した記載がある。具体的には,「50才」,「52才」,「53才上「54才」,「55才」の記載があるが,丸印の付けられた「52才」は平成元年の第1審原告が第1審被告協会と関係を持ち始めた年に対応し,少し大きめの字で書かれた「53才」は前記認定の自宅マンションに係る献金をした年,その上で何度も強調の記載をした「54才」の記載があり,再び丸印の付けられた「55才」の記載がある。「52才」から「53才」の記載には,サタンを意味する「○サ」からの矢印の記載が付されている。その下には,「先祖解放」,「解怨」の記載があり,さらにその下には,丸で囲んだ「53才54才」との記載がされている。
このような記載の体裁にかんがみると,第1審被告Bが主張するように,平成2年6月,第1審原告が53才の時点で,自宅マンションの聖別の名目で担保借入れを勧めるために作成されたとするには,53才の強調の度合いとの平仄が合わず,むしろ第1審原告が主張するように,54才の時点で改めて第1審被告協会に対する貢献を求めた記載と考えられる。よって,作成時期を平成3年5月と認定した次第である。
なお,第1審被告Bは,毎週日曜日は家族揃って川崎教会の礼拝に参加しており,日曜日に世田谷で礼拝することはなく,世田谷のサミットでは最も広い部屋でも6畳の広さであり全体講話はできない旨記載した陳述書(乙ロ14)を提出し,第1審被告Dもこれに沿う陳述書(乙ロ16)を提出する。しかし,当日にFが統一運動に関する全体講話を行ったことは第1審被告Dも認めるところであり(乙ロ6,乙ロ16),第1審被告Bの平成3年5月当時の住所である横浜市緑区美しが丘から公共交通機関を利用して世田谷区三軒茶屋ないし豪徳寺に出てくることは極めて容易であり,第1審被告Bの上記主張は採用できない。

B ●●證券株式会社において上記各株式の売却をした者について,第1審被告Dは,第1審原告が売却手続を自ら行った後,第1審被告Dに対し実印を交付し,売却結果を確認するように求め,職場に戻ったとする第1審被告Dの陳述書及び本人尋問の結果があるが,実印を預けるということは,第1審原告自らが証券会社の窓口担当者に対する手続を行っておきながら,その後に追加の手続が必要になった場合には第1審被告Dに窓口担当者に対する対応をさせることを意味し,●●の職員であった第1審原告が委任状もないのにこのような対応を第1審被告Dに取らせることは不自然といわざるを得ない。また,第1審被告Dは,第1審原告と異なって,株式の売却に関する知識がない〔乙ロ6,第1審被告D本人〕として,第1審被告Dが上記各株式の売却手続を行ったことはあり得ない旨を主張するが,株式の現物を証券会社に持ち込んでとにかく売却するというだけであれば,特段の株式の売却に関する知識は必要がないのであり,第1審被告Dが株式の売却手続を行ったとの認定を左右するものではない。

(13) 32頁19行目の「平成7年8月,」の次に「合同結婚式で結婚相手を得ることを望んでいた」を加える。

(14) 33頁1行目の「原告は,」の次に,次のとおり加える。
「合同結婚式に参加することを希望していたこともあって,これまで多額の献金をしているのに,又献金をしないと合同結婚式に参加できないのかと思って不満ではあったが,」

同頁4行目の「祝福を」から同行目の「26日,」までを次のとおり改める。
「祝福を受けることができなかった。第1審原告は,その後も,祝福結婚式に参加することを希望しつつも,祝福を受けられなかったので祝福献金の返還を求めることもあった。もっとも,第1審原告は,平成16年7月26日,平成9,10年ころに結婚紹介所で知り合った」

同頁6行目の「乙」の次に「ロ4の4,5,」を加える。

(15) 34頁15行目の「言われ」の次に「たことから,大いに喜んで」を加え,同頁20行目の「原告は,帰国後の同年11月25日,」を「文鮮明に会い,その言葉を受けて感激していた第1審原告は,帰国後の同年11月25日,12という数字は天をかける数字だといつも頭にあったことから,自ら1200万円という金額を決めて,」に改める。

(16) 35頁1行目の「申B40,原告本人」を「甲B40,乙ロ5,第1審原告本人,第1審被告C本人」に改める。

同頁19行目の「上記供述記載部分」から同頁22行目の末尾までを次のとおり改める。
「平成7年8月に合同結婚式に参加するための祝福献金を行っていることや平成9年に文鮮明に会って言葉を受けた感激から1200万円もの献金額を自発的に決めて献金を行っていること,上記救国基金及び救国献金以外の献金は平成8年12月から平成12年4月までの間にされたものであることなどを併せ考えると,直ちには採用することができない。」

(17) 36頁2行目の「求められ,」の次に「物品を購入して代金を支払うことが第1審被告協会への貢献に繋がると思ったため,」を加える。

(18) 37頁18行目の冒頭から38頁4行目の末尾までを次のとおり改める。
「前記1(2)で認定したとおり,第1審原告は,平成元年10月29日,印鑑を40万円で購入しており,その際,先生と称する第1審被告協会の信者やEが,第1審原告に対し,先祖因縁に関する発言をしたことは認められるが,これが第1審原告に対する心理的圧力となって,第1審原告の不安,恐怖心をあおることとなり,第1審原告が自由な意思決定を阻害された状態で、上記印鑑の購入をするに至ったとまで認めることはできない。したがって,上記印鑑の購入の勧誘行為をもって違法と評価することはできない。」

(19) 38頁7行目の「被告Cは,」から同頁13行目の「対し,」までを次のとおり改める。
「第1審被告Cは,第1審被告協会に対する献金額を確保するため,第1審原告に自宅マンションを担保に借入れをさせて,借入金を第1審被告協会に貸し付けさせ,その後の時期を見てこれを第1審被告協会に対する献金に振り替えさせようと考え,第1審原告に告げることなく自宅マンションの登記簿謄本を入手し,Gから自宅マンションを担保に7000万円を借り入れることが可能であることを確認した上第1審被告Bや第1審被告Dに対し,時期をみて第1審被告協会への献金に切り替えさせることを前提に,第1審被告協会の教義を説くなどしながら,第1審原告をして,自宅マンションを担保に7000万円を借り入れさせて第1審被告協会に対して貸付期間を3年とする約定で全額を貸し付けさせる
ように勧誘するように指示した。これを受けた第1審被告Bは,かねてから不倫関係にあった男性のことを精神的に清算し切れずにいた第1審原告に対し,」

同頁17行目から同頁18行目にかけての「その結果,不安にかられた原告は,」を次のとおり改める。
「その結果,かねてから不倫関係にあった男性のことを精神的に清算し切れずにいた第1審原告は,自宅マンションを聖別しなければ,不倫関係にあった男性との関係を精神的に清算することができず,神の真の愛を中心とした新たな家庭を築くことができないとの不安にかられ,第1審被告Cの申入れを受け入れ,」

(20) 39頁3行目の「原告に対し」を「転居を口にした第1審原告に対し,自宅マンションを売却して転居するという意志を翻意させないように固めさせた上で,」に改める。

(21) 40頁10行目の「上記献金については,」から同頁16行目の末尾までを次のとおり改める。
「この献金については,第1審被告Bにおいて,第1審原告に対して2000万円の用立てを求めるに際し,「今,Aさんは54歳で7年周期でやってくる転換期にある。」と言った上で,第1審原告が上京した30歳を基点に7年周期を見ると,第1審原告が付き合っていた前記不倫関係にあった男性が,第1審原告の37歳時に糖尿病検査を受診し,45歳時に脳血栓で倒れたことをメモ用紙に書き出しつつ,「決断しなければならない。神様との間の責任分担を果たさなければならない。」,「万物を捧げて天に近付かないと,先祖は解放されない,解怨も果たされない。」,「霊界にいる先祖を救うためには,Aさんもお金を捧げないといけない。」などと献金を求められたことから,第1審原告は,献金することにより先祖の解怨をしなければならないと畏怖したことによるものである。そうすると,この献金勧誘行為は,第1審被告協会の信者である第1審被告Bが,第1審原告に対し,具体的な害悪を告知して,ことさらに不安をあおり,著しく過大な献金をさせたものであり,第1審原告が自由な意思決定を阻害された状態で献金をさせられたということができるから,社会的に相当な範囲を逸脱する違法な行為というべきである。」

(22) 41頁18行目の「70万円を」から同頁20行目の「応じてされたものであり,」までを次のとおり改める。
「70万円を交付しているところ,第1審原告は,個々の(献金等の)勧誘行為等の違法性については,個別の事情に加え,一連の経緯を踏まえて判断をすべきであり,支出された金額の相当性についても,既に支出された金額等も考慮して判断すべきであることを主張する。そこで検討するに,平成9年3月に清平祈祷院建設基金として70万円を献金をする以前の献金である平成2,3年の自宅マンションに絡む献金は,第1審原告が不倫関係にあった男性との関係を精神的に清算することができず,神の真の愛を中心とした新たな家庭を築くことができないとの不安を抱かせるように,自宅マンションの聖別や色情因縁を説くことにより,平成3年5月の株式売却による献金については,先祖因縁による恐怖を説くことにより,それぞれ第1審原告に献金をさせたものであるところ,その後に,第1審原告が平成7年8月に合同結婚式に参加するために祝福献金を行っているごとや,清平修練所での修練会に参加した者は,通例,先祖の解怨のための費用として献金をしているのであるが(甲A41ないし43,弁論の全趣旨),第1審原告は,文鮮明による祈祷院建設基金として350万円の献金を求める指示を聞いて持ち合わせの70万円を献金したこと(甲B40,第1審原告本人。第1審原告に同道した第1審被告Cもこの点を明らかには争っていない。)を併せ考えると,この献金は,従前の献金の延長上のものとして捉えることができるとは必ずしもいえず,同起工式における文鮮明の信者らに対する一般的な呼びかけに応じてされたものという外形的な事実以上に,」

(23) 44頁11行目の「甲A」の次に「46,甲A」を,同頁18行目の「損害は,」の次に「平成2,3年の自宅マンションに関する献金等について」を,同頁20行目の「4100円)」の次に「及び平成3年の株式売却に関する献金5363万6135円」をそれぞれ加える。



(24) 45頁3行目の「平成3年4月1日」の次に「,5363万6135円は同年5月16日」を加え,同頁8行目の「100万円」を「150万円」に,同頁11行目の「850万円」を「1000万円」にそれぞれ改める。


2 以上によれば,原判決は一部相当でないから,これを変更することとし,主文のとおり判決する。

東京高等裁判所第11民事部

裁判長裁判官  岡 久 幸治
   裁判官  佐々木 宗啓
   裁判官  大 寄 麻代